2019/11/27
APSP第26回定例セミナーレポート
SDGs時代のソーシャルプロダクツ
~サーキュラーエコノミー最前線 世界と日本の最新事例~
SDGs時代のソーシャルプロダクツ
~サーキュラーエコノミー最前線 世界と日本の最新事例~
講演①
プラスチックバリューチェーン
~日本におけるサーキュラーエコノミーの実現~
トムラソーティング株式会社 代表取締役 佐々木 恵様
◆トムラソーティングについて
トムラソーティングはゴミ処理施設などに導入されている自動選別機のトップブランドで、リサイクル先進国のドイツに本社があります。回収されたゴミから金属やプラスチックなど有用なものを取り出し、センサーで判定することができる選別機の、開発・製造・販売・メンテナンスを行なっています。グローバルでリサイクルに携わっている経験を踏まえ、高度なマテリアルリサイクルを可能にすることで処理業から資源製造業へ転換するために、現在の日本で何が必要なのかを考えます。
◆リサイクルとは
3Rという言葉があります。「REDUCE(リデュース)」「REUSE(リユース)」「RECYCLE(リサイクル)」の3つの頭文字をとったものです。リデュースは「ゴミの削減・省資源化」のことで、ゴミの出ないようなデザインや簡易包装などで行ないます。リユースは「再利用」で、形を変えずに何度も使うということです。リサイクルは「再資源化」で、ゴミの形を変えて別の用途や資源として利用します。
リサイクルはさらに、熱として回収する「サーマルリサイクル」(海外ではサーマルリカバリーと呼ばれている)、材料として再生する「マテリアルリサイクル」、化学的に分解して資源とする「ケミカルリサイクル」、生ゴミを堆肥にする「コンポスト」や、ガスを作る「バイオガス」に分類できます。ペットボトルからシューズやウェアを作るのはマテリアルリサイクルです。
◆プラスチックのリサイクルが重要
現代社会ではプラスチックが使われすぎているので減らしていこうというのが世界的な動きですが、今のわたしたちの生活からプラスチックを無くしてしまうのは、とてもむずかしいことです。例えばお店ではバナナにポリエチレン(PE)の袋がかかっていますが、単純に昔みたいにそのまま売り買いすればいいかというと、そういうわけにはいきません。実はPE包装することで、バナナの賞味期限が20日も延びるのです。将来的に地球人口が増えて食べ物が不足する可能性を考えると、包装なしで世界中に届けることはできません。もちろん、今のまま便利さだけを追求していていいわけでもないので、正しく回収してリサイクルすることが重要になってきます。
このまま何もしないでいると、2050年までに魚よりもプラスチックが多くなると言われています。一見、青くきれいな海でも、目に見えないマイクロプラスチックが底に堆積しているのです。いったん海に流出すると回収することは不可能なので、これ以上の自然への投棄を防いで、増えないようにするしかありません。
◆正しい知識を得て、消費者意識を高める
日本のリサイクル率は91%で優秀と言われていますが、そのうち71%は焼却して熱利用するサーマルリサイクルです。これは実は新しい基準ではリサイクルに含まれないため、本当の実力は12~15%ということになります。EUの目標は70%なので、日本は非常に頑張らないとそこまで達成できません。そのほか、大都市への人口集中、首都圏での廃棄物量増加、最終処分場の減少、焼却炉の寿命、労働人口の減少など、日本の課題は山積みです。
プラスチックのリサイクルについては、ここ3~4年で消費者意識が加速してきました。海外では消費者がもっと厳しい目を持っており、市場やメーカーの危機意識も高まっています。プラスチック製ストローがやり玉に上がっているのは、身近でわかりやすく、消費者の意識に訴えられるからです。日本には“もったいない”という言葉があるので、その心をくすぐることができれば効果的なのではないでしょうか。中国やインドも、規制を導入しようという姿勢を見せています。
必要なのは、リサイクルについての正しい知識です。リサイクルは子どもも含め、誰にでも簡単にできるようでないと続きません。ノルウェーの例では、7つの行政自治区が協力して作ったゴミ処理施設があり、小学4年生が見学して説明を受けます。そうすると家庭にも知識が伝わり、既に10年続けられていて、非常に効果が上がっているそうです。生活者が正しくリサイクルするには、きちんと選別・回収のできるパッケージにすることが作り手側にも求められます。
◆リサイクル産業=二次原料製造業という発想の転換
きちんとリサイクルすれば、作り手にもコスト削減という利点があります。今までの日本は、クオリティが80点あればいいものにまで99点を求める、という傾向がありました。そこを88点で良しとするようにすれば、それを叶えるだけの技術は既にあるんです。これからはリサイクル産業=二次原料製造業ととらえ、廃棄物ではなく資源だと考える発想の転換が必要です。
リサイクルは汚い・危険・怪しいなどというイメージを払拭して、二次原料を商品に使う勇気をメーカー・ブランドには持っていただければと思います。そして消費者には正しい知識を備え、二次原料を使った製品を支持して「買う」「使う」という意識が広がることを期待しています。
※トムラソーティング株式会社 ホームページ(https://www.tomra.com/ja-jp)
講演②
フードロス削減を100倍楽しくする方法
株式会社クラダシ 代表取締役社長 関藤 竜也様
◆クラダシについて
食品の流通過程でさまざまな理由によって廃棄される商品を、お得な価格で生活者に販売するオンラインショップ「KURADASHI.jp」を運営しています。価格の一部は、環境保護、医療、社会福祉、災害対策、海外、動物保護の6カテゴリー・15団体に寄付できる仕組みとなっており、社会貢献型フードシェアリングシステムとして、ソーシャルプロダクツ・アワードの2017年度優秀賞や、環境省グッドライフアワードの環境大臣賞を受賞しました。「KURADASHI地方創生基金」や、社会貢献型インターンシップ「KURADASHIチャレンジ!」といった新しい試みも行なっています。
◆日本では年間643万トンも食品ロスが出ている
社会課題への取り組みは、「明るく・楽しく・元気よく」「気楽に無理なく」行なうことが大切だと考えています。「自分のためになることをやったら、人のためにもなった」というのが理想です。
日本における食品ロスは年間で643万トンもあります。国民1人あたりに換算すると、毎日おにぎり1個を捨てているのと同じ計算になり、世界ワーストの数字です。一方、世界中の飢餓で苦しんでいる人への食糧援助量は約320万トンなので、その2倍量を日本人は廃棄しているということです。しかもこれは可食部のみの話で、加工途中などでカットされる部分を含めると2000万トンとも言われます。
年間643万トンという食品ロスのうち、半分近くが家庭から出たものです。事業系の場合、飲食店やサプライチェーンでそれぞれロスが出ますが、市場価格やブランドイメージを守るため、単なる安売りをすることはできません。そこでCSRやCSVとも結びつけ、売上の3~5%を社会福祉に寄付するという仕組みを作ったのです。
◆新しい仕組みを作り、食品ロスを減らす
私自身は大阪府の出身で、阪神・淡路大震災が起きたとき、バックパックに水を入れて神戸まで助けに行こうとした経験があり、自分1人でできることの無力感に打ちのめされたことが原体験となっています。また、その後、商社でいろいろな経験を積むうちに、まだ食べられる食品が規格に合わないなどの理由でコンテナ単位で大量に廃棄されている現実を知り、これは手掛けるべき事業だという思いが募っていきました。そして2014年7月に創業し(当時の社名はグラウクス株式会社)、2015年2月にサイトをオープンしました。
社会福祉への寄付につながるという形にしたことで、イメージを大事にする企業からも協賛してもらいやすくなりました。賞味期限が間近に迫っている、季節が合わなくなってしまった、などの訳あり商品を、最大97%オフで販売しています。新聞やテレビ、雑誌などで取り上げてもらったことで、徐々に知られるようになりました。現在、40~50代の主婦層を中心に約8万人の会員がいます。買う人は、仕組みをきちんと理解してくださっている、社会貢献への意識の高い方々であるのが特徴です。
◆2030年までに食料廃棄を現在の半分に!
3年前くらいから、恵方巻きが大量に廃棄されている問題が物議を醸しています。政府が削減を呼びかけるまでになったのは異例な事態と言えるでしょう。毎年10月16日は、国連の世界食料デーです。こういった流れで上場企業なども意識し始めており、次の恵方巻きの時期にどういうことが起きるか注目されます。オリンピックと世界の飢餓を結びつけて取り上げられる可能性もあります。
かつては社販やファミリーセールなどのクローズドマーケット、訳あり市場やブローカーなどのディスカウントルートもありましたが、ネットが発達した情報社会では、そういうことがしにくくなりました。10月1日より食品ロス削減推進法も施行され、きちんとした市場を作る必要が出てきています。フードバンクや子ども食堂もありますが、企業が大口の寄付をしようにも受け手のキャパシティがなかったり、複数の施設があるため不平等の声が上がったりと、現実的には難しい面があります。
そんな中、「KURADASHI.jp」の取り組みは、社会性、環境性、経済性のどれをとってもデメリットはありません。SDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールのうち「つくる責任 つかう責任」では、「2030年までに世界全体の1人あたりの食料廃棄を半減させる」というターゲット(具体目標)が設定されています。果てしなく遠い数字ですが、産官学民で連携して目指していかなければなりません。「KURADASHI.jp」では自分のために購入したものが社会貢献になる。そんなところから広がっていけばと思います。