企業訪問インタビュー<br> ゼロ・ウェイストの町<br><徳島県・上勝町>を訪ねて

2020/04/13

企業訪問インタビュー
ゼロ・ウェイストの町
<徳島県・上勝町>を訪ねて

2003年に日本で初めてゼロ・ウェイストを宣言した徳島県・上勝町。
ゼロ・ウェイスト宣言とは、
①地球を汚さない人づくりに努めます。
②ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
③地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!
の3つの目標のこと。
行政の取り組みをさらに加速させるために、2005年にNPO法人 ゼロ・ウェイストアカデミーを設立しました。人口1,500人余りの上勝町が、なぜゼロ・ウェイスト宣言に取り組んだのか、二人三脚で取り組んできた上勝町役場の菅さんとゼロ・ウェイストアカデミーの藤井さんにお話を伺ってきました。

◆ゼロ・ウェイストの取り組みの第一歩は生ゴミの堆肥化でした

上勝町では野焼きによるごみ処理が主でしたが、1997年の廃棄物処理法の改正に基づき、県からの指導で野焼きを続けられなくなり、焼却炉の新設を求められていました。その新設した焼却炉もダイオキシン類の基準値以上が検出され、3年間しか使えませんでした。新たな焼却炉を建設できるほどの財政的余裕はなく、別の町の民間焼却炉へごみを運び処分していました。ごみ袋1つにつき約300円の行政負担の処理費用がかかるので、費用圧縮のためには総量を減らすことが急務でした。そこでまず状況把握のために、ごみの総量と組成を調査すると、家庭ごみの3~4割が生ごみという結果が明らかになりました。
焼却ごみを減らすために、まずは生ごみをなんとかしようとスタートしたのが生ごみの堆肥化でした。生ごみ処理機を自己負担1万円で購入できるように町が補助をして、ほぼすべての家庭に普及させることができました。生ごみ以外は住民自ら分別してごみステーションまで持ってきてもらいます。現在では45品目を資源として仕分けをして、リサイクル率80%以上を達成しています。基本的に一般家庭からのごみ持ち込み料は無料で、一部の事業者は焼却ごみの量に応じて費用を請求します。ごみステーションは、12月31日~1月2日の3日間を除いて毎日営業しているので住民の方は自分がごみ出しをしたいときに出せるというメリットがあります。高齢者や車がない住民向けに2か月に1回自宅まで町の職員が直接回収に行っています。
それぞれのコンテナの前の表示には、この資源の処理費がいくらかかって、いくらで買い取ってもらえるかの情報が記載されています。どこで何に生まれ変わっているのかも表示してあり、「このごみのリサイクルにこれだけお金かかるんだな、この資源ってこれぐらいで売れるんだ」というのが一目で分かるようになっています。

◆リユース・アップサイクルの取り組み

ごみステーションの中に【くるくるショップ】を設置しております。このショップは、自分はもう使わないけどまだ使えるものを住民が持ち込んでおくと、どなたでも無料で持っていく事ができるリユースショップです。基本的に無料で使えるので結構重宝されています。2017年度は持ち込み7.7トン、持ち帰り8.4トン。前年度の繰り越しがあったためこの年は持ち帰りの方が多かったのですが、その前年は持ち込みも持ち帰りも15トンずつなので、9~10割のものが使いたい人の手に渡っていて、廃棄されずに済んでいます。
また、【くるくる工房】はNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーが運営しているショップで、着物や鯉のぼりの生地をリメイクし別の商品に作り変えて販売しています。その売り上げは町内の何人かの作家たちの収入になっています。

(くるくるショップ)                (くるくる工房)

◆6割の処理費用削減と住民とのコミュニケーション

2017年度、上勝町から排出したごみの総量は286トン。もし全て分別せずに焼却・埋め立てたとすると1,170万円の経費がかかる計算です。焼却は一番処理費用が高いのですが、資源化する事によって593万円に処理費を抑えられています。分別したことで6割位処理費用が削減できています。丁寧な分別には他にもメリットがあって、金属と紙などのお金になるごみは、その売上金が213万円。この売上金は住民の方が手間暇かけて分別してくれたことによる収益なので、少しでも住民の方に還元する「ちりつもポイント(『チリも積もれば山となる』が由来)」という上勝町のポイントサービスがあります。お金になる金属・紙、その他分別する事によって処理費用がかからなくなるもの、抑えられるものを対象にポイントを付与しています。そのポイントで交換できる商品には、使い捨てではなく長く使えるものや繰り返し使えるものを選んでいます。

◆そもそもごみを出さないリデュースへの取り組み

使い捨てのごみを出さない取り組みとして量り売りを飲食店や商店にお願いしています。マイ容器をもってきてくれたら、必要な分だけ詰められることを住民に紹介して、できるだけ使い捨てのゴミが発生しないような買い方を提案しています。これもポイントがつくのですが、まだ一部の人しか利用が無いのでもっと広げていけたらと思っています。発生抑制としてもう一つは赤ちゃんのおむつです。上勝ではおむつは焼却ごみなのですが、希望者に布おむつをプレゼントし、紙おむつと併用で使ってみて下さいと提案しています。

◆ゼロ・ウェイスト認証って?

ゼロ・ウェイスト認証制度は、ゼロ・ウェイストに取り組む事業所をNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー独自の基準で認証する制度です。
各事業所は、
① 従業員がゼロ・ウェイストの研修を受けていること
② 自治体の制度に則り、適切な分別・リサイクルに取り組んでいること
③ ゼロ・ウェイスト活動に目標を設定して計画的に取り組むこと
以上3つの条件をクリアしたうえで、以下6種類の基準で審査されます。

◇LOCAL FOOD
地域の食材を活用し、地産地消に努め、ごみの発生抑制に取り組んでいる
例)地元農家から直接仕入れを行うことで、容器包装を使わず仕入れている

◇RETURNABLE
食材や資材の調達において、ごみの発生抑制に取り組んでいる
例)仕入れの際にマイコンテナやクーラーボックス等を持参し、仕入れ容器ごみを削減している

◇IDEA
おしぼり等の無料サービスにおいて、ごみの発生抑制に取り組んでいる
例)おしぼりはリユース、シュガースティックではなく角砂糖をポットで出すなど使い捨て製品を使わない

◇OPEN for ACTION
利用者がごみの削減あるいは分別に取り組める工夫をしている
例)顧客へゼロ・ウェイストに取り組んでいることを情報発信し、参加できる仕掛けを設けている

◇BYO
利用者が食器や容器ごみなどの代用品を持ち込むことで、ごみの発生抑制に繋がる仕組みを導入・周知している
例)マイボトルを持参すれば割引があり、コーヒーを使い捨て容器無しでテイクアウトできる

◇LOCAL REUSE
再利用を通じ、地域内のごみの発生抑制・資源循環に取り組んでいる
例)古民家や建具など置いておくと廃材としてごみになってしまう地域資源を活用し、店舗に活かしている
この認証を受けることで、環境に配慮している店舗であることを理解してもらい、これがブランドの価値創造になります。
年間1,000人くらいの方が上勝町の取り組みを視察に訪れてくれますので、ごみステーションを見て帰るだけではなく、認証制度を知ってもらうことで、「こういう取り組みをしているお店があるならご飯食べていこうか、お茶飲んでいこうか」、と町内の経済効果にもつながることも期待しています。

(上勝町内でゼロ・ウェイスト認証を受けた店のひとつ「RISE&WIN BREWING CO. BBO&GENERAL STORE」

◆2021年以降の活動は・・・

ゼロ・ウェイストという文化を発信するため、新しいごみステーションとして複合施設「ワイ(WHY)」を現在建て替え中です。そこに企業や大学との協業の場としてシェアオフィスや宿泊棟を設けています。人を呼び込み、体験を通じた経済効果を狙っています。
また、交流人口や関係人口は増えていますが、町民は増えていないので、仕事を作って移住しやすい環境づくりを行政と町内企業とで一緒に考えています。
さらにこの町の取り組みをサーキュラーエコノミーの概念まで引き上げていきたいです。上勝町のこれまでの実績は、何がどこまでリサイクルできるかを証明したことです。そもそもの原材料調達・製品デザイン(設計)の段階から回収・資源の再利用を考えた、環境性能の高い商品やサービスの提供を企業とともに取り組んでいきます。

2020年4月20日にオープンした上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)

 

【取材を終えて】

少子高齢化が進む四国で一番小さい町の上勝町。日本料理のあしらいに使われる葉っぱビジネスや今回取材したゼロ・ウェイストの取り組みなど、海外メディアや全国から注目されていますが、小さなことから始めて本当に大きなアクションにつながっていると感じました。アイデアあふれるこの町の今後の取り組みが楽しみです。複合施設「WHY」が完成したら訪れてみるのはいかがでしょうか。

上勝町 HP
URL:https://zwtk.jp/

NPO法人 ゼロ・ウェイストアカデミー
URL:http://zwa.jp/

上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY」
URL:https://why-kamikatsu.jp/

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