7 月 20 日は海の日でした。海に囲まれた島国である日本は、豊富な海洋資源に恵まれています。
しかし近年、水質の低下や海洋環境の汚染が大きな社会問題となっています。
そのため、2010 年にこうした問題に取り組む仕組みとして、海の自然や資源を守って獲られた持続可能な水産物(シーフード)を認証する制度ができました。この認証制度は「天然」の水産物用と「養殖」の水産物用の 2 種類がありますが、今回は、最近日本で運用が開始されたばかりの後者の制度=ASC 認証制度をご紹介します。
●認定制度の特徴●
現在、世界の水産物のおよそ半分は養殖によって生産されています。しかし、養殖のための海洋への薬品投与や餌の大量投与による水質の悪化、養殖魚の逃
避による生態系の攪乱による環境への悪影響、また劣悪な労働環境は、大きな社会問題になっています。
ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)認証は、こうした問題の解決に寄与することを目的としています。環境負荷を低減し、地域社会にも配慮した養殖業を「認証」し、ASC マークを貼付することで、生活者に当該商品が「責任ある養殖水産物」であることを明示しています。
ASC 認証には、規格に適合する養殖場を認証する「ASC 養殖認証」と、認証水産物の製品製造、加工、流通業者を認証する「ASC COC 認証」があります。
●認定制度を利用するメリットは?●
ASC マークを商品に貼付することで、それが責任ある養殖水産物であることを生活者にアピールすることができます。また、生活者は、ASC マークが付いた製品を選ぶことで、責任ある養殖業の支援に参加することができます。また、ASC 認証によって、その養殖生産品の原産地や生産手法が明らかにされるため、その水産物がどこでどのようにして生産されたものかを知ることが可能になります。
こうした情報の明確化は、生産者や流通側が、より責任を持って養殖業に関わることにもつながり、持続可能な方法での養殖業の活性化、海洋環境の保全に大きく寄与します。
●認定を取得した取り組み・取得状況●
現在のところ、ASC 認証の対象としてとなっている魚介類は、全部で 12 品目です。これらのうち、すでにティラピア、パンガシウス、サケ、二枚貝(カキ、ホタテ、アサリ、ムール貝)、アワビ、淡水性マス、エビについては、基準作りの作業が完了し、ティラピアとパンガシウスは認証製品が誕生し、流通が始まっています。
日本国内では、ASC の認証を受けた養殖水産物の販売が、2014 年 3 月 1 日より始まりました。ASC の認証を受けたノルウェー産タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)とベトナム産パンガシウスが、スーパーマーケットのイオンで販売されています。
●ご担当者様からのコメント●
養殖産業は急激に成長しています。
これに伴って、養殖による自然環境と地域社会への負の影響が懸念されています。環境保全に取り組むWWF ジャパンは、この問題を解決する取組の一つとして、ASC 認証制度の普及を支援しています。日本でもASC ラベルの付いた責任ある養殖水産物が購入できるので、ぜひ、選んでください。
それが、責任ある取組をしている生産者や流通業者を応援し、未来に豊かな海を引き継ぐことになります。ASC 認証を紹介するビデオが、下記 URL より閲覧で
きます。一度のぞいてみてください。
http://www.wwf.or.jp/activities/nature/cat1136/asc/index.html
取材ご協力:WWF ジャパン ご担当 新井様