世界における5歳未満児の死亡原因の約3割が、衛生環境の悪さ等に由来する肺炎・下痢・マラリアであるということをご存知でしょうか。1つ買うと、カンボジアの子どもたちに1つ届く「スカルプD SAVE SOAP(以下SAVE SOAP)」。この「SAVE SOAPプロジェクト」を立ち上げた、アンファー株式会社の池城安雲様にお話を伺いました。
(新型コロナウイルス感染拡大への配慮からオンラインにて取材を行いました。)
―はじめに「SAVE SOAPプロジェクト」の内容について教えてください。
カンボジアの衛生環境を、子どもたちに石けんを届けることによって改善していくというプロジェクトです。アンファーのECサイトを介して石けんを1つ購入いただくと、カンボジアの子どもたちにくまのシール入りの石けんが1つ届くという仕組みです。
―プロジェクト発足の経緯について教えてください。
もともと社会貢献ができるような商品を作りたいという想いがあり、創立30周年で開催された社内の企画コンペに応募したのがきっかけでした。アンファーでは、医師・専門家と共に、「予防医学」を取り入れた幅広いサービスの開発に取り組んでいます。そこで私はスカルプDの「洗う」技術を取り入れた石けんによる手洗い・全身洗いでの感染症の予防に着目し、「SAVE SOAP」の着想を得ました。ほぼ全社員が参加したそのコンペの中で「SAVE SOAP」が最優秀賞を頂くことができ、世界に「予防医学」を届けるというコンセプトの基、この「SAVE SOAPプロジェクト」が発足しました。
また、石けんによる衛生教育によって解決できる課題を持った国の中で、「継続的」にプロジェクトを行う為、ご協力頂けるパートナー、行政や保健センターとの関係性を踏まえ、カンボジアでの感染症予防活動を行うこととなりました。
(カンボジアでのプロジェクトの様子。実際に現地に赴き、子供達たちに直接石けんをプレゼントしました。)
―プロジェクトの成果を、どのように設定・検証されていますか。
現地(カンボジア)での活動においては、胎児期から2歳の誕生日までの1000日間に焦点をあてて、乳幼児・妊産婦の衛生・栄養 状態の改善及び感染症予防の成果を検証しています。現在「SAVE SOAP」の配布個数 は約10,000個となっており、活動地域における現状の下痢発生率46.3%からの低下を目指しています。
―商品の特徴について教えてください。
虫が多く発生する温暖な気候の場所でも、気兼ねなく涼しげな生活ができるよう、再生可能な植物原料から誘導された100%バイオベースドなアロマケミカル「メンタンジオール」を配合しています。また、天然成分使用の枠練り透明石けんとなり、古代ローマ時代から愛用されてきた天然成分のヤシ油由来です。高い洗浄性を持ちながら、クリーミーな泡立ちで肌の皮脂を取りすぎず、しっとりなめらかな洗い上がりを実現しています。保湿成分も配合し、うるおいのある仕上がりを実感できると思います。製造過程では、廃液を出さない製造方法を採用し、リサイクル材料を使用した森林認証取得(FSC森林認証マーク)のパッケージを採り入れるなど、環境面にも様々な配慮を行っています。
デザインについては、カンボジアの子どもたちに手洗いの習慣を普及させるべく、石けんの中にかわいいクマのシールを入れています。それによって石けんに親しみやすさや、使い切るとシールが出てくるというゲーム性が生まれ、楽しく手洗いできるようになっています。また形状も円型で手に収まりやすく、透過性を持たせることで清潔感を感じさせるデザインになっています。さらに、泡立ちやしっとりした洗い上がり、香りにも配慮するなど、子どもたちに愛されることを考えて商品設計を行いました。
―「SAVE SOAPプロジェクト」の一環で製作された「Washable Book」についても教えてください。
プロジェクトを進めていく中で、石けんの物自体の不足よりも、手洗いの習慣や教育が不足しているという課題が浮き彫りになりました。そのため、子どもたちに喜んで楽しく手洗いを行ってもらえるように「Washable book」を開発しました。この「Washable Book」は、水が浸透するとカラフルな隠し絵が現れるという印刷技術を応用し、「石けんでページを洗うことで物語を楽しむ」 という体験を提供する世界初の絵本です。絵本にすることによって、言葉が分からなくても視覚的に楽しめ、絵が変わるといった仕掛けでより手洗いを楽しんで行ってもらえるのではないかと考えています。カンボジアでの石けん配布時に「Washable Book」も各地域に一冊ずつ寄付し、石けんを使用した手洗いの際にデモンストレーションとして「Washable Book」も一緒に使用しています。
(Washable Book)
―プロジェクトの進行において特に苦労したことがあれば教えてください。
私自身にとっても、企業としても国際的なCSRの活動は初めてだったので、パートナー探しから輸送の方法や仕組み作り、プロモーションの方法まで全てのことに慣れておらず苦労しました。最初は一人で企画したプロジェクトですが、プロジェクトの理念に賛同してくれた様々な部署からのチームメンバー、そして会社の内外問わず多くの方々に協力して頂いたおかげで、何とかプロジェクトをスタートさせることができました。
―生活者からの反響はどのようなものでしょうか。
おかげさまでプロジェクトに関しては、たくさんのポジティブなお声を頂いています。特に、石けんを購入するだけで社会貢献を行えるというプロジェクトの仕組みに賛同していただくお声が多いです。またプロジェクト発足時には、30代~40代の男女で主にお子様のいる女性をメインターゲットとして想定していましたが、思った以上に男性の方にも興味を持っていただけていると感じています。用途としては家庭用が主ですが、企業や団体から子どもへの衛生教育の為やギフトとして、まとめて購入したいというお声も何度か頂いています。社会貢献に興味のある方は勿論ですが、「スカルプD」のシャンプーは知っていて使っているという方にも、アンファーという企業としての活動に共感して頂きたいという想いで今後も商品の販売を行ってまいります。
(Dクリニック事業部 ブランド戦略部 メンズブランド課 課長 池城安雲様)
―最後に、今後の課題や新たな展望についてお聞かせください。
このプロジェクトはお客様の共感を得ながら進めていくものなので、国内でもより多くの方に認知されていくことを課題と捉え、メディア等でも露出していきたいと考えています。また、アンファーの既存のお客様を中心に、現地にどの程度手洗いの習慣が定着したのかを提示し、SNSなどを活用してより多くの生活者に情報が届くようプロモーションなどを行う予定です。「ひとつ買えば、ひとつ届く」というシンプルなメッセージを打ち出しながら、ビジュアルで分かりやすく伝えることを引き続き意識していきます。そして今は未定ですが、将来的には新しい展開として、カンボジア以外の国へのプロジェクトの展開の可能性も検討していきたいです。
―ありがとうございました。
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(取材を終えて)
「SAVE SOAPプロジェクト」を進行していく中でのやりがいや苦労を伺うことができ、このプロジェクトはたくさんの人のお力添えがあったからこそ実施できているものだと再認識できました。今後カンボジアの衛生環境に苦しむ子どもたちが、少しでも減っていくことを願っています。ご協力ありがとうございました。
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「SAVE SOAPプロジェクト」ホームページ
(取材:高橋さくら)
「スカルプD SAVE SOAP」は、ソーシャルプロダクツ・アワード2020自由テーマ ソーシャルプロダクツ賞を受賞しています。