ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>株式会社エー・ピーカンパニー

2013/05/22

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
株式会社エー・ピーカンパニー

飲食業でありながら、食材の生産・加工・流通まで手がける「エー・ピーカンパニー」は、独自の事業展開で成長を続け、2012年9月には東証マザーズに上場。食材に対する徹底的なこだわりと、生産者・生活者双方のメリットを作りながら、より良い社会づくりに貢献するビジネスモデルについて、企画本部の岡田英樹様にお話を伺いました。

エー・ピーカンパニー企画本部 岡田英樹様

 

御社のビジネスモデルの特徴を教えてください。

弊社は「塚田農場」をはじめとした、地鶏や水産物を提供する居酒屋を経営しています。その中で、「食のあるべき姿を追求する」という企業理念のもと、販売だけでなく生産の現場にまで目を向け、宮崎県の自社養鶏場あるいは契約農家が育てた「みやざき地頭鶏」、自社漁船や契約漁師が獲った魚類を自社店舗で販売する「生販直結モデル」を展開しています。生産者から直接仕入れ、中間流通を排除することにより、美味しいものを安くお客様にご提供することが可能となりました。2004年に1店舗1業態から始めた事業ですが、今や16業態にまで拡大し、2013年5月末には147店舗目を出店する予定です。ここ数年は毎月3~4店舗のペースで新規出店し続けています。

 

―「生販直結モデル」に取り組んだ経緯や理由を教えてください。

お客様に美味しい地鶏を安く提供したいという理由で始めた仕組みですが、同時に我々は第一次産業の現状を目の当たりにすることとなりました。地元の農家は、収入面での厳しさと後継者不足という大きな問題を抱えていました。地鶏を多く育てて出荷したいという気持ちとは裏腹に、卸先が全て買い取ってくれる保証はない。細々と養鶏を続けるものの、収入面でも不安が大きいため、後継者が育たない。

このような状況を知り、弊社が取り扱う食材を通して、日本の第一次産業を活性化することはできないだろうかと考えました。そこで、契約農家からの地鶏の全量買い取りに取り組みました。育てた地鶏全てを買い取ることを保証し、生産者の収入の安定化を図りました。このようにすることで、衰退しつつある日本の第一次産業の活性化と、より良い社会づくりに取り組もうと思ったのです。

 

そのような取り組みは、具体的にはどういった結果につながっていますか?

2004年には3ヶ所だった宮崎県日南市の契約農家が、現在13ヶ所にまで増えました。順調な新規出店に伴い、地鶏の消費量も年々増加しており、現在では同市に設立した自社農場での生産も合わせて、宮崎県全体の地鶏の約6割にあたる36~40万羽を弊社が仕入れています。契約農家の中には、県外での就職を考えていた若者が、後継者として地元に残って養鶏場を営んでいる例もあります。

養鶏風景

 

御社の「生販直結モデル」の商品面以外での強みがあれば教えてください。

生産者と直結していることで、命あるものを食材として大切に扱うことの重要性を、店舗スタッフにまで徹底して共有できるということがあります。弊社では、店舗の社員を宮崎の生産現場に派遣し、契約農家の方が丹精込めて育てた鶏が食肉として加工される段階までの全行程の見学を通じて、仕入れる食材が、どこでどのように育てたられたものなのかを学ぶ機会を設けています。

また、年に一度、生産者から店舗のアルバイトまで数百人が集う「AP万博」というイベントを開催しています。ここでは生産者・販売者がお互いの現場の生の声を聞くことができ、それがそれぞれの業務に対する意識の向上に役立っています。生産者は、自分たちが育てた地鶏を、お客様が喜んで召し上がる様子を知ることで、より品質の良い地鶏を育てようという意識が強まります。販売者は生産者の苦労を知ることで、食材を決して無駄にはできないという意識が強まります。例えば、お客様のテーブルの上で冷めてしまった「じとっこ焼き」を、もう一度キッチンで温め直して、大根おろしやポン酢を添えて再度お客様のもとへお出しする―そうすると、お客様は喜んで召し上がってくれます。

こうした取り組みがお客様に高く評価され、平均60%超という既存店の顧客リピート率につながっているのだと思います。このようにお互いの状況を知り、事業に活かせるのも、「生販直結モデル」だからではないでしょうか。

 

―飲食業でありながら第一次産業も手がけるという挑戦の中には多くの困難もあったことと思いますが、苦労したことやそれを乗り越えた事例などをお聞かせ下さい。

弊社では、食材となる地鶏を部位単位ではなく、一羽丸々仕入れます。地鶏といえばモモ焼きが有名ですが、以前、そのメニューばかりが売れて、他の部位を大量に余らせてしまったことがありました。これでは、契約農家の方々にも申し訳ないし、そもそも食材を有効活用できていない。そこで、全ての部位をバランスよく活用できるようなメニュー開発に取り組みました。モモ焼きの材料に、何割か皮と胸肉を混ぜたり、手羽も唐揚げにしたり、それでも出てしまう端材の肉はソーセージに、ガラは日南の工場でスープに加工しています。希少部位はレギュラーメニューではなく季節限定で出すなどの工夫で、地鶏一羽を余すことなく活用しています。

 

―「生販直結モデル」を水産物でも始められたそうですが、それはどのような理由からですか?また、今後のことについてもお聞かせください。

 2006年11月、科学専門誌「サイエンス」で、2048年までに世界中の天然魚介類が壊滅してしまうとの報告がされました。そこで弊社では、水産資源の保全と、日本の漁業の存続を視野に入れ、定置網や一本釣りなどの持続可能な方法を採用した漁業に着手しました。2048年以降も天然の水産物を得られるように、との願いを込めて、このような水産物を提供する店舗名を「四十八漁場」としています。

定置網漁では、様々な魚類が網に入ります。中にはバリやサンノジといった市場に出回らない、いわゆる未利用魚もあり、従来は漁師が海洋廃棄していました。せっかく網に入った水産資源を何とか利用できないか―そこで、未利用魚をつみれなどに加工し、お客様にご提供する取り組みを始めました。新鮮で美味しいと大変好評を頂いています。

これからも、お客様に喜んでいただくことを第一に、地元での雇用促進と、地鶏や水産資源をはじめとする食材の有効利用、日本の第一次産業の活性化に積極的に取り組んでいきたいと思います。

漁業風景

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株式会社エー・ピーカンパニー

東京都豊島区西池袋1丁目10-1 ISOビル6階

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