APSP第11回定例セミナーレポート<br>大手企業におけるソーシャルプロダクツ開発 <br>~誕生の背景と商品化までの道のり~

2014/09/17

APSP第11回定例セミナーレポート
大手企業におけるソーシャルプロダクツ開発
~誕生の背景と商品化までの道のり~

第十一回:大手企業におけるソーシャルプロダクツ開発  ~誕生の背景と商品化までの道のり~

ソーシャルプロダクツ普及推進協会では、9月17日、「大手企業におけるソーシャルプロダクツ開発~誕生の背景と商品化までの道のり~」と題した第11回定例セミナーを開催しました。

 

講演1『社長から新入社員まで 私たちの巻き込み方

          ~ソーシャルプロダクツが生まれる土壌づくり~』

株式会社ディノス・セシール

広報室 CSR・社内広報ユニット スペシャリスト

山内 三保子氏 

 

ディノス・セシールでは、チャリティー付きカタログや国産材の家具といったソーシャルプロダクツを扱っています。

 

CSRについては「ブランドイメージの向上によって中・長期的に売り上げに貢献する有効なマーケティング手法」と言われている一方で、これまでは「本当に売り上げにつながるのか」「会社として取り組むべきものなのか」という声もありました。ただ、現在では、「企業として当然取り組むべきもの」という捉え方をされるようになってきています。ディノス・セシールでも「CSRは会社のためになっている」という認識を持っています。

 

私たちの特徴としては、ビジネスがダイレクトマーケティングという事業で、自社媒体を持ち、受注をリアルタイムで把握できるので、お客様の動き(注文)と社会貢献を結び付け易いということがあります。

 

ディノス様

我々は2001年に環境ISOを取得したのですが、その後の更新審査、環境ISOの運用の全面見直しを行う中で、社内の意識が変わってきました。社内のエコ検定合格者たちの間から「チームD-eco(合併後の名称はチームDeCo)」という有志のチームが自然発生的に生まれ、社内のエコ&社会貢献意識向上を目指して活動を始めました。チームDeCoが仕掛けた最初の活動はエコキャップ回収で、その後、パソコンのこまめな電源オフ、タンブラーを使おうキャンペーンなど、これまでに様々な取り組みを行ってきました。彼らは、チャリティーイベントにも力をいれているのですが、社内の人にいかに楽しく参加してもらうか、参加へのハードルをいかに低くするかをいつも真剣に考えています。また、階層別のアプローチも行っており、夏場に行った「チャリティービール」のイベントでは、経営陣から協賛を募ったり、各部署の長に回数券を買っていただいたりするなど、大変多くの経営陣や社員の参加を実現しています。私自身はメンバーが動きやすい環境をつくることを心掛けているのですが、自分も含め、「楽しく」「気軽に」というのが、取り組みを進める上でのとても大事なポイントだと思います。

 

ソーシャルプロダクツの開発には、こういった活動の蓄積が影響しました。2009年にディノス初のチャリティー付きカタログを発行したのですが、ターゲット、販売部数、こうしたチャリティーに理解を持ってくれる部署・カタログはどこだろうと考えて、50-60代をターゲットにしたダーマ・コレクションに打診したところ、二つ返事でOKをもらいました。当時は一冊まるごとチャリティー付きというものは珍しく、各種メディアにも取り上げられ、ソーシャルプロダクツは広報的価値があるという認識が社内に広がりました。さらに、売り上げ前年比190%という結果が出たことで、CSRは売り上げにも貢献するという認識が広まりました。

 

2011年には、国内の林業・木材加工業の再生を目指して生み出された国産材家具シリーズが発売開始となりました。こちらも、復興エコポイント、木材利用ポイントの交換商品に登録されるなどして売り上げを伸ばし、成功したカタログとなりました。

 

ソーシャルプロダクツの開発・展開は、いきなりやろうと思っても難しいですが、社内の動かしやすそうなところから動かし、様々な動力をフル活用しながら、経営層、管理職層、従業員、さらには商品部門、・・・と歯車がかみ合うようにしていけば、ソーシャルプロダクツ開発という歯車も動き出します。社会的取り組みに関して、無理なく超えられる低めのハードルから始めて、徐々に高めのハードルを置いていき、気づいた時にはソーシャルプロダクツが生まれていたというのは、他でも参考にしていただけるかもしれません。今後は、商品を調達する際にフェアトレードを取り入れるなど、取扱商品の半分がソーシャルプロダクツになることを目指したいと思います。

 

 

講演2 『“テーブルから未来を変える”「ファンケル フェアトレードフーズ」の開発』

株式会社ファンケルヘルスサイエンス

戦略推進本部 商品企画部 機能性食品開発グループ

吉積 一真氏 

 

ファンケルでは、「テーブルから未来を変える FANCL Fair Trade Fooods」というシリーズを発売しています。今日はこのシリーズが誕生するまでの道のりについてお話します。

 

ファンケル様

私はファンケルで研究者として世界各国の有用植物を調査する仕事をしてきました。訪問先は主に途上国と呼ばれる国々なのですが、そこで教育を受けられない子ども、児童労働、子どもの人身売買といった現実を目の当たりにし、何かできなることはないかと思ったことがフェアトレードフーズの開発のきっかけです。仕事を通じて何かできないかと考えた私は、社内の新規事業提案制度を活用し、フェアトレード商品を開発しようとしました。しかし、この制度に応募するも4回も落選。ただ、あきらめず様々な挑戦をしている中で、JETROの輸入企画開発実証事業に採択され、社内でも5回目の挑戦で遂に審査を通過しました。ここから事業化に向けて本格的な取り組みが始まったのです。

 

化粧品や健康食品の会社として知られているファンケルがなぜフェアトレードに取り組むのかと思われることもありますが、ファンケルは、「人間大好き企業」として、世の中の「不」の解消を目指し、安心・安全・やさしさを追求することを企業理念としています。健康事業会社として、日本人の健康についての「不」の解消、日本に限らず世界中の人たちの健康に対する「不」の解消を使命としているのです。フェアトレードはまさに世界の「不」の解消のための事業です。

 

ファンケルのフェアトレード事業のコンセプトは、「おいしくて健康機能が高く、高品質な食品をフェアトレードの商流に載せてお届けし、お客様の未来も豊かにする」というものです。また、途上国の生産者だけでなく、その子どもたちの未来も豊かにしたいと、フェアトレードフーズの売り上げの5%をプレミアムとして、子どもの教育のために活動する団体へ寄付しています。

商品の開発にあたっては、ファンケルの安全基準は譲れない条件として守ってきました。ファンケルは商品づくりに関して、安全性に大変力を入れていますが、これと同じように、途上国の生産現場でも、品質管理、ロット管理、トレーサビリティの徹底を求めました。 生産国では、日本の常識は通じないことも多く、品質管理についての生産者の意識もまるで異なります。当初はなぜこんなことをしなければいけないのかと理解してもらえなかったのですが、何度も足を運び、理解してくれるまで根気強く話し合いました。時間がかかりましたが、現在では「ファンケルの品質基準に応えることができれば、その商品は世界中どこへ行っても売ることができる」と思ってもらえるようになりました。

こうして誕生したのが、「うまみじお・さんみじお・あまみじお」という塩のシリーズとやし花糖という砂糖、完熟こしょうです。どれもミネラルをはじめとする健康成分がたくさん含まれ、味がよく、非常に高品質な商品です。販売についてはまだまだこれからの部分がありますが、通販の顧客を中心に売り上げを伸ばしています。

 

私が開発から販売まで携わった経験から申し上げるならば、ソーシャルプロダクツの開発・展開には、開発者の情熱、幹部や社員の理解、そして社会のソーシャルプロダクツへの理解が不可欠であると考えています。

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