APSP第12回定例セミナーレポート<br>2014年のソーシャルを振り返る

2014/12/12

APSP第12回定例セミナーレポート
2014年のソーシャルを振り返る

第十二回:2014年のソーシャルを振り返る

ソーシャルプロダクツ普及推進協会では、2014年12月12日、「2014年のソーシャルを振り返る」と題した特別セミナーを開催しました。

 

講演1:ソーシャルプロダクツ普及推進協会 専務理事/事務局長 中間大維

テーマ:「2014年のソーシャルを振り返る」

 

「2014年のソーシャルを振り返る」ということで、まずは今年行われた調査から生活者の意識とその変化についてご紹介したいと思います。内閣府の調査によると、「社会の役に立ちたい」と回答する人は年々増加しており、今年は、全体の65%ほどとなりました。また、「日本人はどういう人か」と聞いた別な調査では「他人の役に立とうとしている」という回答が「自分のことだけに気を配っている」という回答を過去35年で初めて上回り、社会的意識と行動のギャップが埋まりつつあることがわかりました。世界的に見ても、ソーシャルプロダクツを求める人の割合は高まってきており、そうしたニーズにどう応えていくのかは、企業にとって大きな課題であるとともにチャンスでもあります。

 

nakama次に、ソーシャルプロダクツの関連領域ごとに2014年の動きを見てみます。まず、「オーガニック」については、市場は顕著に継続拡大しており、これまでにオーガニック製品が見られなかったカテゴリでも該当商品が登場したり、イオンがプライベートブランド「トップバリュ グリーンアイ」で取り扱い額の大幅拡大を目指したりするなどの動きが見られました。

「フェアトレード」については、2013年の日本国内の市場規模は前年比約22%の約90億円に、世界では同7115億円、前年比15%増となりました。オーガニック市場に比べれば、その規模はまだまだ小さいものの、大手アパレルメーカーがフェアトレードをベースにしたブランドを立ち上げたり、名古屋や札幌などの地方の主要都市でフェアトレードタウン構想が進められたりするなど、今後の継続的な市場拡大を期待させる新しい動きもありました。

復興支援については、東日本大震災から3年が過ぎ、支援を終了する企業も少なくありません。その一方で、他の社会的課題への取り組みと組み合わせて支援を継続する商品が生まれるなど、ソーシャルプロダクツとしての進化が見られました。

 

商品・サービス以外のソーシャル関連の動きとしては、ソフトバンクがNPOのロゴマーク等にスマホをかざすだけで寄付ができるプラットフォームを開発したり、ボランティア活動がライブチケットになる大型音楽イベントが開かれたりするなど、これまで「ソーシャル(よりよい社会づくり)」と接点がなかった人にも「ソーシャル」が広がりました。「気軽さ」「楽しさ」は「ソーシャル」と多くの生活者を近づける重要なキーワードであると言えます。

そのほか、今年はふるさと納税が急増しましたが、背景にあるのは寄付による特典(地元特産品等の提供)の見直しです。ふるさと納税が変形型の「寄付つき商品」になったのです。寄付へのハードルを下げ、厳しい財政状況の足しにするために、クラウドファンディングの活用を始める自治体も出てきており、官民融合の取り組みは今後も増えるものと思われます。政府は地方創生を主要政策のひとつとして掲げており、2015年も地方の動きは注目です。

 

 

 

講演2:株式会社巡の環 代表取締役 阿部裕志氏

テーマ:『これからの地域の価値創造~島まるごとを活かしたソーシャルプロダクツづくり~』

 

私は大学院終了後に就職したトヨタ自動車を退職した後、友人を通じて「島全体がサステナブル」であると偶然知った海士町に移住し、巡の環という会社を興しました。

 

abe海士町は、日本海・島根半島の沖合約60km に浮かぶ隠岐諸島の小さな島です。昭和25 年頃は人口約7,000 人ほどでしたが、平成22 年には2,374 人に減少し、世帯数は1,052、高齢化率39%となっています。島の子どもたちは、高校卒業後、ほとんどが島外へ流出するため20~30 歳代の人口が少なく、出生数も年に10 人前後といった状況でした。

国の経済対策に呼応した公共事業への投資で社会資本は整備され、住民の暮らしは改善された一方で借金である地方債の残高はふくらみ、ピーク時(平成13 年度末)で約101.5 億円となっていました。このような状況の中、平成14年の町長選挙で「公共事業で生きてきた島、生かされてきた島が変わらなければいけない」と訴えた新町長が選ばれました。

新しい町政では、町長に続き職員も自らの報酬削減を決定し、「役場は住民サービスのための総合株式会社である」との意識のもとに動き出しました。年功序列を廃止して適材適所主義を徹底し、組織を現場主義に変えていきました。「自分たちの島は自ら守り、島の未来は自ら築く」という住民や職員の「気概」と「誇り」が、自立への道を選択させたのです。

また、生き残りを懸けた攻めの戦略として、「島まるごとブランド化で地産地商」を掲げました。「島じゃ常識サザエカレー」や岩ガキなど、島の特産品をブランド化して、島外で販売することで“外貨”の獲得を目指したのです。

さらに、「まちづくり」の原点は「ひとづくり」にあるとして、「人間力溢れる海士人」の育成を目指した教育事業や交流事業にも力を入れたことで、海士町へ移住する人も出てきました。廃校寸前だった島唯一の高校も、現在は廃校を免れ、本土から島留学する生徒も増えてきました。

 

このように海士町では数々の改革をしながら、島の活性化を行ってきました。小規模町村こそ自治の担い手であり、「地方が主役」になることが国の元気であり、「地方分権」ではなく、「地方主権」なのです。地域活性化の源は交流であり、地域づくり、まちづくりの原点は人づくりなのです。

私は、これからの日本を考えるにあたって、持続可能な社会のモデルが必要であり、地域に雇用が生まれないとその地域が持続可能にはなれない、持続可能な雇用のためにはどこにも「しわよせ」のいかないビジネスモデルが必要と結論づけました。これは、巡の環を起業した時からの問題意識です。巡の環では、教育事業、地域づくり事業、メディア事業の3つを軸においています。各種シンポジウムやメディア発信を通じて、2013年度は海士に学びに来た人300人、島外で講演を聴いてくれた人4000人、巡の環の売上4500万円という成果を出すことができました。全国各地から参加者を海士町に呼んで学んでもらう「海士五感塾」では、海士町のそのままの暮らしを紹介しているのですが、町民に「自分たちの当たり前」が「魅力」でもあると気づいてもらえるメリットもありました。

これからも巡の環の事業を通じて、「くらし」・「しごと(コミュニティとのつながり)」・「かせぎ(労働の対価)」の3つがバランスよく共存する新しい生き方の探求と、実践を通じた発信を行い、地域活性化を実現していきたいと思います。

 

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