食卓に並ぶシーフードには、大きく分けて、海や川で獲られた「天然」と、人の手で育てられ、流通している「養殖」のものがあります。現在、養殖業の成長は著しく、世界の水産物のおよそ半分を占めるほどになっています。
しかし、こうした養殖水産業には、餌となる天然魚の過剰利用、養殖魚の逃避による生態系の攪乱など、環境に悪影響を及ぼすケースが少なくないのが現状です。今回は、養殖業を持続可能な形で行ないながら、そこに生活する人たちの暮らしにも配慮するための認証制度「ASC 認証」を紹介します。
●認証制度の特徴は?●
ASC の養殖認証は自然環境と社会・労働問題に配慮した養殖を認証する制度です。オランダに本部のある「水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)」が管理する「責任ある養殖のための原則と基準」に基づき、養殖業を第三者の認証機関が認証し、その水産物には ASCの認証マークが与えられます。特徴的なのは、認証制度の基準が、「水産養殖管理検討会」という円卓会議で、生産者や生産者団体、バイヤー等の多様な水産物流通関係者だけではなく、研究者や環境保護団体の意見をもとに策定されるという点です。
ASC 認証の有効期間は 3 年で、認証を継続して受けるには 3 年ごとに審査を受ける必要があります。
●認証制度を利用するメリットは?●
ASC の取り組みは、生活者に、環境と社会に配慮した責任ある養殖水産物を確実に届ける手段です。ASC
マーク付き製品を選ぶことで、生活者は安心して養殖水産物を買うことができると同時に、養殖業の取り組みを支えることにつながります。
ASC の認証では、収穫後の水産物の加工・流通過程のトレーサビリティーについても審査が行われます。
こうした情報の明確化は、生産者や流通側が、自身の生産品、製品に対してより責任を持って養殖業に関わることにもつながります。
●認定を取得した取り組み・取得状況●
現在、ASC はティラピア、パンガシウス(ナマズ類)、アワビ、二枚貝(ホタテ、カキ、ハマグリ、ムール貝)、エビ、淡水マス、サケ、ブリ・スギ類の 8 つの魚種(品目)に対し、その養殖形態に応じて個別の原則と基準を設け、管理しています。
認証製品は全世界で4900品以上あり、日本の事業者からは134品が ASC 認証マーク付きプロダクツとして流通しています。(2016 年3月 16 日現在)
●担当者からのコメント●
ASC 認証の取り組みは、まだ始まったばかりですが、水産物の世界的な消費大国である日本と、水産養殖物の9割を生産しているアジア地域では、今後重要性が高くなる可能性を秘めています。環境保全に配慮しているという証となるため、社会的責任を果たしている企業であるという強いインパクトを社会に与え、企業イメージを高めることも期待できます。是非、関心を高め、積極的に取り入れていただきたいと思います。(WWF ジャパン・自然保護室・水産担当 前川 聡さん)
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