2021/06/25
バリ島のお洒落でサステイナブルな
BAMBOO STRAW(バンブーストロー)
ーBALIISM Japan株式会社ー
インドネシアにあるバリ島には昔から現地の竹で作られた“竹ストロー”がありました。しかし現地の竹ストローは質が低く使い捨てされており、とても商品化できるものではありませんでした。BALIISMはそんなストローに目を付け、環境にやさしく、繰り返し使うことができるお洒落なBAMBOO STRAW(バンブーストロー)を作りました。
今回はBALIISM Japan株式会社代表の長谷川真之様(以下敬称略)にBAMBOO STRAW(バンブーストロー)製作のきっかけや背景を中心にお話を伺いました。
※「バンブーストローシリーズ」はソーシャルプロダクツ・アワード2021自由テーマ部門にてソーシャルプロダクツ賞を受賞しました。
BALIISM Japan代表 長谷川真之様
―使い捨てのストローから繰り返し使えるストローへ―
野口:世間でも竹を使った商品というのはいくつか見受けられます。その中でも“ストロー”に着目した理由を教えてください。
長谷川:もとはバリ島のリゾートの雰囲気を楽しんでもらいたいと思い、ストローに着目しました。現地では昔からプラスチックではなく植物の茎や竹のストローを使っていたのですが、自然分解されるからか使い捨ての習慣がありました。それがもったいないと感じ、なんとか繰り返し使えないかと思ったのがきっかけです。BAMBOO STRAW(バンブーストローの)は洗えば繰り返し使うことができるので、脱プラスチックや廃棄問題に貢献できると考えています。
野口:製作段階で心掛けた点はありましたか。
長谷川:バリ島では昔から竹ストローがあるのですが、日本では浸透していませんでした。それってつまり、竹ストローに商品としての価値が無かったからなんです。バリ島で従来からあった竹ストローを日本でも使ってもらえるようにするには、商品としての価値を上げることが大切だと思いました。現地の方は竹ストローが商品として売れると思っていなかったので、最初は「ちゃんとした質の高いものを作れば売れる」と指導しました。
写真:均一にカット・加工された商品の写真からもその質の高さが感じられる。
野口:製作において苦労した点はありましたか。
長谷川:国民性の違いですかね。現地の方はとてものんびりしており、納期などで苦労しました。日本人はせかせかしているみたいです。今は製作現場に納期の管理をする人を付けて、グローバル基準で管理しています。ただバリ島独自の国民性は大切にしていきたいです。
写真:生産現場で働く現地の女性と長谷川様
―用途別に製作することで竹を有効活用―
野口: BAMBOO STRAW(バンブーストロー)はどのように製作されているのですか。
長谷川:まずは竹をストローの用途別にカットします。竹の先端は細く根本は太いため、ストローを均等な大きさで作る場合、どうしても余りが出てしまうんです。そこであえて通常用の他にタピオカ用など太さの違うストローを作ることで、竹全体の有効活用に繋げました。バリ島ではタピオカ用ストローの需要がなかったので、最初に制作する時、現地でストローを作る職人さんはそんな太いストローが売れるのか疑問を抱いていたみたいです。
野口:竹をカットする時にストローの用途別で仕分けするんですね。使っている機械などを拝見するとどのように製作しているのか気になります。
長谷川:使用している道具自体はシンプルです。まず竹を切断用の機械で商品別にカットした後、写真のような回転した円型の機械で竹を薄く滑らかにしていきます。ストローの中の加工に関してですが、卓上ボール盤という穴加工専用の機械があり、その機械に付いている回転ドリルにヤスリを巻き付けます。そして巻き付けたヤスリを回転しストローの中を薄く削っていきます。ちなみに日本の竹でもBAMBOO STRAWが作れないかと取り組んだのですが、竹の性質が違うからか上手くいきませんでした。
野口:竹ストローを使っていくとささくれなどが気になりますが、加工で工夫している面はありますか。
長谷川:BAMBOO STRAW(バンブーストロー)の端の部分はやすりで丸みを帯びた形にし、ささくれの発生を防いでいます。またコーヒーなどを飲むと竹に色が移ったりするので、その防止としてストローの中に植物油を染み込ませ、自然由来のオイルコーティングをしています。
写真:製作現場の様子。女性の手元のある円型の機械で切削加工を行う。
野口:竹1本あたりどのくらいのBAMBOO STRAW(バンブーストロー)が作られますか。
長谷川:竹1本の長さは約2m50cmあり、通常用のストローだと5本程度、タピオカ用などを合わせると12本程作ることができます。1日当たりだと約300本を生産しています。
―自然分解されるストロー―
野口:BAMBOO STRAW(バンブーストロー)の使用推奨期間は1年間と伺いました。捨てる時はどうしたら良いでしょうか。
長谷川:自然分解されるので、できれば土に埋めていただきたいです。バリ島現地ではもともと竹ストローが道などにポイ捨てされていたのですが、竹素材は自然に戻る分、そこまでゴミ問題にはならなかったんです。プラスチック製品が増えた今は、現地でもゴミ問題が課題となっていますが。
野口:どのくらいの期間で自然分解されるのでしょうか。
長谷川:自然分解にかかる期間について実験を行いました。自然分解には温度と土のバクテリアが関係しているため、自然に戻るまでの期間は、冬場は長く夏は短いです。バリ島の気候だと3~4か月くらいで完全に分解されます。自然環境の条件次第のため正確な期間は断定できないのが現状です。
―社会性のある商品は自然と注目されていく―
野口:BAMBOO STRAW(バンブーストロー)を売り出すときに心掛けていることはありますか。
長谷川:現在はあまりプロモーションには力を入れていません。サステナビリティを商品に落とし込んでいる企業はまだ少ないため、社会問題の解決に向けて商品を通じてどのような取り組みを行っているのかというストーリー性がある商品を作ることができれば、自然と注目していただけると感じています。
野口:今回、ソーシャルプロダクツ・アワードを受賞したことによる変化はありましたか。
長谷川:ソーシャルプロダクツ・アワードを受賞したことで、商品の信頼性を得られたと感じています。グリーンウォッシュが増えている中で、第三者からの評価があることは大きな利点だと考えています。
―環境にやさしい+商品として魅力的―
野口:BAMBOO STRAW(バンブーストロー)に込められたメッセージ性、及び購入されたお客様からの感想をお伺いしたいです。
長谷川:BAMBOO STRAW(バンブーストロー)を通じて、プラスチックの問題を調べたり、その背景を知ることでライフスタイルを変えるきっかけになってほしいです。また実際に購入したお客様の中には環境にやさしいだけでなく、商品の見た目から使いたいと思わせる魅力があるという感想をいただいています。
写真:ストローを変えるだけでリゾートの雰囲気を感じることができる。
野口:日本など生産拠点の拡大は考えていますか
長谷川:輸送時のエネルギーを考えてると消費者に近い拠点で生産した方がいいと考えています。しかし日本の竹だとバンブーストローを作るのは難しいです。そこで現在は、業務用として麦を使ったストローの製作を考えています。ストローの原点は麦なので、国産の麦を使って、原点に戻りましょうというストーリーは面白そうだと思っています。
野口:今後の課題や展望があればお伺いしたいです。
長谷川: BAMBOO STRAW(バンブーストロー)を製作する職人さんたちにお支払いしている給与はバリ島内では高い方なのですが、先進国の一般的な給与額とはまだギャップがあるのが現状です。先進国並みの給与を実現しようとすると商品の価格を4倍近くにする必要があり、雇用体制と商品展開のバランスといった部分での課題と向き合っています。弊社の今後の展望としては、BAMBOO STRAW(バンブーストロー)とは別の方面になるのですが、小型の太陽光蓄電池の開発を検討しています。窓に張り付けて発電し、モバイルバッテリーとして使用してもらうことで、もっと日常的に個人がクリーンな電力を使うことができればいいと考えています。
野口:本日は貴重なお話をありがとうございました。
[インタビューを終えて]
BAMBOO STRAW(バンブーストロー)のように海外では当たり前でも日本には無いものが実はたくさんあり、そこにソーシャルを考えるヒントがあるのではないかと考えるきっかけになりました。また小型の太陽光発電など既存の枠組みに囚われず、挑戦し続けていく姿勢がBAMBOO STRAW(バンブーストロー)商品化にも繋がっていたのだと感じました。
[プロフィール]
獨協大学経済学部経済学科 インターン生 野口和雅
環境問題に幅広く関心があり、大学では環境経済学を専攻、部活では環境国際団体Decoに所属。現在はAPSPでインターン活動として記事作成などに取り組む。
BALIISM Japan株式会社: https://www.jp.baliism.asia/