売り手と買い手を笑顔でつなぐ リユースアプリ「売れseeエコ活」 ―株式会社エコリング―

2021/08/06

売り手と買い手を笑顔でつなぐ リユースアプリ「売れseeエコ活」 ―株式会社エコリング―

世界中がSDGsを実現するため取り組みを進める中、大量生産・大量消費という現代の物の流れが見直されています。その中でも特に、不要になったものを捨てるのではなく、必要としている方にお渡しするリユースには高い注目が集まっています。そのような背景をうけ、古物の買取販売事業を行っている株式会社エコリングは、物を売る側と受け取る側のつながりを可視化する新しいアプリサービス「売れseeエコ活」を、2018年に開発・リリースしました。

今回は株式会社エコリングの大和田様、村上様(以下敬称略)に「売れseeエコ活」開発のきっかけや社会的課題解決に向けた事業展開を中心にお話を伺いました。

※ 株式会社エコリング|売上高131億円(2020年度)|店舗数127店(2021年8月1日時点)
※「売れseeエコ活」はソーシャルプロダクツ・アワード2021の自由テーマ部門にてソーシャルプロダクツ賞を受賞しました。
(https://www.apsp.or.jp/product/spa2021_053/)

 

皆様からお売りいただいた商品が世界の笑顔を増やします

 

東原:まず、御社の事業について教えてください。

大和田:私たちは、お客様の不要となった物品を買い受け、次の必要とされる方へ引き渡すリユースビジネスを通じ、世界中の廃棄物を削減するとともに、“地球や環境にやさしい生活”を提案するB-Corp認証企業です。買い受けた商品は、自社インターネットオークション(エコオクおよびエコトレ)等で、世界中の必要とされる方にお引渡しする事業を核としています。世界を見渡すことでグローバルな課題が見えてきたことから、現在は特にSDGsに準拠したサステナビリティ活動に注力しながら展開しています。

 

受け取った方の喜ぶ顔が見えるアプリサービス

東原:では、「売れseeエコ活」というサービスについて教えていただけますでしょうか。

大和田:お客様からお買取りさせていただいた商品を次に必要とされる方にお渡しし、受け取られた方からの喜びのメッセージをお伝えするサービスで、お買い取りした商品が実際にどんな方に届いたのかということや喜んでいただいた声をお伝えするほか、これらの商品が確実に届いたことを証明し、その透明性を開示することを目的としています。

東原:御社の事業経緯とともに、こちらのサービスを作られたきっかけを教えてください。

大和田:当店に売却されたお客様より、手放された商品がどんな方に届いたのかということに興味があるという情報をヒアリングし、代表の桑田の「こういうサービスがあったら面白いんじゃないか」「もっとお客様のニーズにお応えしたい」というひらめきや信念からこのサービスが生まれました。発端として桑田から提案があったのが2018年頭で、そこから仕組みづくりをしてシステムを整えていきました。
また、社会の役に立てるような社会問題解決型組織になろうという社内の意識変革をし始めたのも2018年でした。企業として利益を上げることは、株式会社である以上当然ではありますが、地域や社会にもより貢献していこうと舵を切った時期です。このサービスはその中で出てきたアイデアの一つと言えます。

 

お客様の笑顔のため、社員たちの意識もひとつに

東原:サービスの開発や展開において、苦労された点を教えてください。

大和田:開発時に苦労したことの一つに、事業の意義を社員に浸透させることが挙げられます。社員一人一人に、本サービスに込められた思いへの理解度や意識が揃っているかどうかで、成果にも大きな差が出ます。収益性やお客様のニーズなどへの様々な懸念がある中、ネガティブな意見も吸い上げながら、時間をかけて本サービスの意義を社員たちに浸透させてきました。
また当社は、なるべくどんなものでも買い取りをし、お客様に満足していただこうと取り組んでおりますので、膨大な量の商品の販売先を見つけることも非常に苦労したところでした。ひとまず何でも買い取り、後から売り先を見つけることもあるほどです。現在は国内だけでなく海外にも販売拠点を見出すことで、対応することができるようになってきています。

東原:このサービスにより、買取事業の方は活性化しましたか。

大和田:はい、活性化したと感じています。実際にリリースするまではどんな反応が得られるか分からず不安がありましたが、品物が必要とされている方にきちんと届いた様子を伝えることで「エコリングを利用して良かった」という声を、多くのお客様から得ることができました。他社がされていないサービスだからこそ差別化ができ、当社のアピールポイントになったと思います。
また、お客様はもちろん社員たちの意識にも変化がありました。会社として利益を出すことだけでなく、自分たちの取り組みを通して社会に貢献できているとの実感が持てたり、人の笑顔を作っていけたりすることが現場の社員のモチベーションアップにもつながっています。

買取品目は多種多様
できるだけ多くのものを買取っています

 


アプリを通して海外とつながる

東原:お客様の数は増えてきていらっしゃいますか。お客様はどのような方が多いのでしょうか。

大和田:「売れseeエコ活」はアプリ上からのみ利用できるサービスなのですが、アプリダウンロード数は増加しており、どちらかというと女性が多いです。売れseeエコ活を利用することを目的にアプリをダウンロードしてくださるお客様もいらっしゃいます。
アプリのダウンロード数は現在7万5000件で、当社のお客様全体の1割ほどの方々が利用してくださっています。当社店舗にお売りに来られたお客様に店頭でアプリのご案内をしてまいりましたが、最近ではメディアを通じて「売れseeエコ活」のご紹介をする機会も増えてきました。

東原:「売れseeエコ活」を利用した方々からの評判はいかがですか。

大和田:品物を受け取った方々からの写真やメッセージは大変好評をいただいております。お売りいただいた方も、海外の思いがけない方が、自身の売った商品を手にされていることを喜んでいただいています。

お買い上げいただいた海外のお客様から
感謝のメッセージが届きます

 

利益だけでなくより良い社会の実現を目指す時代へ

東原:近年、お客様の層やお客様の意識に変化はありましたか。

大和田:直近ですとコロナウイルスの影響で家の片付けをし、身軽に生活しようと考える人が増えていますので、そのときに出てきた不要なものを持って来ていただくことが多くなりました。お客様の層に変化はございませんが、一件ずつの持ち込み点数は増えています。このような動きは今後もしばらく続くのではないかと考えています。

村上:近年はお金を得るために品物を売るのではなく、必要としてくれる誰かに役立てて欲しいという想いから持ち込んでくださるお客様が増えたように感じます。当社では、かねてからお売りいただいた商品を無駄にすることなく、海外の学校に寄付するなどの活動を行っておりますが、そういったことが浸透してきているのではないかと思います。
衣類やぬいぐるみなど、これまでお持ち込みいただけなかったものもお売りいただけるケースが増えてきております。

東原:生活者の社会貢献への意識や消費行動を変えるために、企業としてどう取り組んでいらっしゃいますか。

大和田:当社では環境問題と貧困問題の2つを解決していくことを軸にしており、現代の大量生産・大量消費を解決することで、それらの問題の解決を目指していきます。お客様(消費者)への啓発や啓蒙活動とともに、私たちの事業を通して社会問題解決に寄与していきたいですね。

「売れseeエコ活」の他には、企業様に寄付ボックスを置かせていただいて、集まった品物を1kg10円に換算して海外の児童養護施設の子どもたちのために役立てる「えがおプロジェクト」などにも取り組んでいます。当社は2次流通を行う企業ですが、SDGsという共通の目標に向かってご協力をいただいている企業様とも同じ方向を向いて取り組むことができていると感じています。

東原:「売れseeエコ活」について、現在抱えていらっしゃる課題はありますか。

大和田:「売れseeエコ活」自体の質をさらにブラッシュアップしていきたいですね。現在は品物を船で輸送しており、商品を受け取った方の声をお客様にお届けできるまでに数か月のお時間が生じております。今後は、お売りいただいた商品が今どこにあるか等の情報をタイムリーにお伝えできるようになれば、よりお客様に支援しているという実感をお持ちいただけると考えておりますので、仕組みの改善等を検討したいと考えております。
また当社は、社会問題を解決していくために様々な取り組みを行なっておりますので、「売れseeエコ活」がその内のひとつとして埋もれてしまわないよう工夫して発信していきたいです。

東原:エコリング様全体としての課題も教えてください。

大和田:課題は、新型コロナウイルスの影響やリユース意識の高まりによりお客様からお売りいただける品数が増えたことです。多くのお客様にご利用いただけているということで嬉しい悲鳴なのですが、忙しいときこそ適切な対応が求められます。取引ボリュームに比例した運営ができるよう整えることが重要であると考えます。
新型コロナウイルスの影響は先行き不透明ですが、当社に長く勤めていただけるように、人材確保や人財教育にも力を入れております。特に管理部門においては、テレワークにより従来まで生じていた通勤時間を、社員の勉強時間に充てるよう積極的に啓発しています。

東原:最後に、今後の展望や事業展開についてお聞かせください。

大和田:今後実現したいのは、24時間世界のどこかでエコリングが稼働している環境を作るということです。これは代表の夢でもあります。将来はヨーロッパやアメリカなどを含め海外に広く展開していくことを目指していますが、まずはアジアでナンバーワンのリユース企業になれるよう取り組んでいきます。また、Bコーポレーション認証(※米国ペンシルバニア州に本拠を置く非営利団体B Labが運営している認証制度で、環境や社会に配慮した事業活動を行っており、アカウンタビリティや透明性などB Labの掲げる基準を満たした企業に対して与えられる民間認証)を2021年6月18日に取得いたしました。この認証を取得している日本の企業は我々を含めてまだ7社ですので、当社は先進的な取り組みをすることができているのではないかと自負しています。
これは桑田をはじめとする私たちの考え方を体現したものであり、そういった取り組みに時間や労力を注げる点こそ当社の強みであり、時間をかけて取り組んできたことで、現場レベルでも自分たちが社会問題を解決していこうという意識が芽生えるという良い循環ができていると考えます。今後もさらに社会問題の解決に寄与していける組織になっていきたいと考えています。

東原:本日は貴重なお話をありがとうございました。


【インタビューを終えて】
不要になったものを手放すという身近な行為を、人々の笑顔を生み出す良い循環のスタートにすることができると学びました。よりお客様に喜んでいただきたい、社会に良い影響を与えたいという社長のひたむきな想いが、まさに社名の通り輪のようにお客様や社員の方々に伝わっていき、売る側も受け取る側も幸せになることができるサービス「売れseeエコ活」が生まれたのだと感じました。

 

【プロフィール】
神田外語大学 外国語学部 英米語学科 インターン生 東原 風花
外国語を通して世界が抱える問題を学ぶ中でSDGsに興味を持ち、部活動では自然災害復興支援団体MAKE SMIlEで代表を勤めた。現在はAPSPでインターン活動として記事作成などに取り組む。

 

 

この企業について

株式会社エコリング

兵庫県姫路市飾磨区恵美酒213

http://www.eco-ring.com/

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