男の子ならミニカーのトミカ・女の子であればリカちゃん人形―子どもの頃、一度は手にしたことがあるおもちゃではないでしょうか。そのおもちゃメーカーが、今、環境に配慮したおもちゃづくりに取り組んでいます。今回は、環境に配慮したおもちゃ「エコトイ」を通じ、未来を担う子どもたちのエコ活動を応援する株式会社タカラトミーをご紹介します。「エコトイ」を手がける社長室環境課の高林様、長野様にお話を伺いました。
(写真左:高林様 写真右:長野様)
―「エコトイ」を始められた時期や経緯を教えてください。
当社は、「環境にやさしいおもちゃづくり」「おもちゃを通じて子どもたちに環境を考えるきっかけづくり」「おもちゃ会社らしい環境活動」の3つを柱に、環境問題へ取り組んでいます。その活動の中心にあるのが「エコトイ」活動です。この活動は、社長室環境課が主体となって推進しています。この部署は、環境問題への関心が高まる中、2010年1月に発足しました。それまでも、当社では、社内のエネルギー消費量を削減する活動等には取り組んでいましたが、新たな部署を設け、おもちゃ会社らしい・おもちゃ会社だからこそできる環境活動に着手しました。
―「エコトイ」について詳しくお伺いできますか。
当社のエコに関する自社基準には①おもちゃづくりがエコ ②あそびがエコ ③ながくあそべてエコ の3種類があります。このうち1つ以上の基準を満たしたものを「エコトイ」として認定しています。
①おもちゃづくりがエコ は、省資源化・軽量化に取り組んだり、再生材料を使用したりしたものです。従来品を省資源化したり、再生プラスチックを原料にしたりすることで、環境への負荷を低減することができます。また、製品の軽量化は、輸送時の燃料使用、すなわちCO2の排出を削減することにつながります。
②あそびがエコ では、電池を使わない設計や省エネルギー設計に取り組んでいます。LED電球を使用して消費電力を低減したり、手回し発電や、ソーラー発電機能をおもちゃに搭載したりしています。
③ながくあそべてエコ は、部品の交換によって長く・繰り返し遊べる仕様にしたものです。消耗する部品を交換し長く使うことで、廃棄されるおもちゃの削減につながります。
このように、「エコトイ」は、おもちゃをつくる・運ぶ・遊ぶ・捨てる、などの場面で環境に配慮した製品です。
「エコトイ」の商品(一部)
―「エコトイ」は子ども向けの商品ですが、商品の社会性を伝える上でどのような工夫をされていますか?
テレビCMや幼児本・子ども向け雑誌等で、おもちゃの広告を目にしたことがあるかと思いますが、実は我々の商品の認知経路で最も有力なのは、おもちゃ屋や量販店等の店頭なのです。そこで、「エコトイ」もパッケージに表示し、店頭で子どもたちや親御さんに認知してもらえるようにしています。
販売中の「エコトイ」には、子どもにも目につくようにパッケージの表側に「エコトイ」マークを表示し、裏側には「何がエコなのか」ということを親御さんに分かってもらえるような説明を記載しています。親御さんはお子さんのおもちゃを選ぶとき、意外に細かい説明や仕様について知ろうとするものです。購入前に商品裏面の説明を読んでいただき、「エコな商品なら買ってみようかな」とお子さんに買い与えるというケースもあると思います。
タカラトミーHPより引用
―そのような取り組みの結果、「エコトイ」の認知や販売は広がっているのでしょうか?
「エコトイ」が店頭に並ぶようになって3年目ですから、50年以上の歴史あるプラレール等、他の商品に比べると認知は低いのですが、徐々に広がってきていると思います。当社が生活者に実施したアンケート調査によると、当社のおもちゃユーザー層で「エコトイ」を認知している割合は約2割でした。
「エコトイ」の一つであるプラレールの「エコ直線(曲線)レール」は、材料に再生プラスチックを50%以上配合した商品です。通常は青色のレールですが、環境をイメージしやすいよう緑色にしています。この商品を購入した方へ、購入理由を聞いたところ、半数は「色が珍しいから」という回答でしたが、残りの半数からは「エコな商品だから」という回答が得られました。
面白いことに、「エコ直線(曲線)レール」の発売以降も、既存の青色のプラレールの販売数は減少していません。つまり、通常のレールにプラスアルファで「エコ直線(曲線)レール」が売れているということです。エコという付加価値を持った商品が、生活者の共感を得て購買に結び付き、結果として売り上げに貢献することができているのだと思います。
通常のレール(上)と「エコトイ」のレール(下)
―「エコトイ」活動は順調に進んできたように見受けられますが、何か苦労されたことはありますか?
「エコ直線・曲線レール」は、今でこそエコなおもちゃを代表する商品となっていますが、初めは社内で「子どもが使うおもちゃに再生材料を使うと、安全性を心配される方がいるのではないか」という懸念がありました。そこで、我々の商品のユーザー層に対して調査を行い、再生材料に対するネガティブなイメージがほとんど無いという確証を得て、さらに安心して遊んでいただけるよう第三者認証の「エコマーク」をおもちゃで初めて取得した上で、ようやく商品化に踏み切りました。
当然ですが、子どもたちが楽しめるおもちゃ、喜ぶおもちゃであることが前提としてあって、そこに商品の安全性やエコの要素、価格の妥当性が加わって初めて「エコトイ」商品が生まれます。エコな商品であっても、楽しくなければ売れませんし、安全でなければ親御さんにも選んで頂けません。製造コストがかかりすぎても問題です。このように、全ての要素をバランスよく取り入れなくてはならないということは、商品開発で苦労している点です。しかし、こうした苦労を乗り越えて商品化された「エコトイ」の各商品は、おかげさまで好評を頂いており、年々商品展開数も少しずつですが増加しています。
―社会的課題の解決に対して、「エコトイ」はどのような役割を果たせるとお考えでしょうか?
我々はおもちゃメーカーであるという特長―子どもたちが自ら好んで使ってくれる商品を扱う事業者として、子どもたちの環境に対する意識をより高めるお手伝いができると考えています。当社が行う様々なイベントや出張授業等を通じて、多くの子どもたちと関わる中で感じることですが、我々が想像する以上に、現代の子どもたちは環境問題に関する知識を持っています。未来を担い、生きてゆく子どもたちに、「エコトイ」をきっかけに、もっと環境問題に関心を持ってもらい、そして多くのことを学んでもらいたい。そのような意識を持った子どもたちが成長した時には、今よりもっと進んだ環境問題への取り組みがなされるのではないかと思います。そういう意味で、「エコトイ」は環境問題をはじめとする社会的課題の解決に対して大きな可能性を持つ商品であると思います。
―「エコトイ」以外にも何か環境に関係するようなおもちゃはあるのですか?
子どもたちにとても人気です。子どもたちに向けた弊社のエコ活動のひとつとして、地球環境カードゲーム「My Earth」とコラボレーションしたエコトイカードゲームを配布しています。これは、カード対戦の遊びを通して、地球上の生物や温暖化、人間の活動などが、それぞれどのように関係しているのかを学ぶことができるカードゲームです。カードゲームというと難しいのではないかと思われるかもしれませんが、幼児でも遊べるような簡単なルールも設定されており、小さな子どもから大人まで一緒に遊べるようになっています。当社が参加・出展するイベント等で無料配布していますが、
環境について学べるカードゲーム
―今後の目標をお聞かせください。
より多くの「エコトイ」を世に送り出したいということは常々考えています。ただ、やみくもに新しい商品を作って数を増やすのではなく、当社のロングセラー商品を少しずつ「エコトイ」へ切り替える方向で進めたいと思っています。おもちゃ業界で、エコや環境に関する活動をしている企業はまだ少なく、商品を通じたエコへの取り組みは我々が先頭を切って着手しました。エコトイ活動を通じて出会った他社さんとは情報を共有するネットワークもできましたし、一緒にイベントを行なって、業種を超えた繋がりにも恵まれてきました。これからも、様々な企業と協力し、子どもたちが環境について考えるきっかけ作りに取り組んでいきたいと思います。