オンラインで、生地やデザイン、サイズを自由にカスタムし、自分好みのオーダースーツ・シャツを作ることができるファッションレーベル「FABRIC TOKYO」。同社では昨年、日本初となるフェアトレードコットンを使用したオーダーシャツの販売を開始しました。
今回は、「フェアトレードオーダーシャツ」の開発経緯や、顧客からの反響、今後の展望などについて、企画開発をされたクリエイティブ室・室長の峯村様にお話をうかがいました。
-まずは、「フェアトレードオーダーシャツ」の開発経緯を教えてください。
アパレル産業は二酸化炭素や汚水の排出、労働者の人権問題などといった課題を抱えており、石油産業に続き、社会に大きなインパクトを与えている産業だといわれています。例えば、インドのコットン生産現場では、農家の人々が農薬による健康被害や借金苦による自殺といった問題に苦しんでいます。一方、現在、世界の繊維全体の6割〜7割を占めているポリエステルは枯渇燃料を原料とすることから、あと50 年でなくなってしまうといわれており、コットンやウールなどの天然繊維がさらに重要となっていきます。そうなった時にコットン生産のあり方はこのままでいいのだろうか?という問題意識に端を発し、アパレル産業の状況をより持続可能な形に変えていくためには、フェアトレードとオーガニックが非常に大切だと考え、今回の商品の開発に至りました。
またこの商品は、FABRIC TOKYOのビジョン、「誰もが自分らしいライフスタイルを自由にデザインできるオープンな社会をつくる」を形にしたものでもあります。ブランドコンセプト「Fit Your Life」には、オーダーメイドだからサイズをピッタリ合わせることができるというだけでなく、一人一人のライフスタイルや価値観にフィットするビジネスウェアであるという思いも込められています。社会にはサステナブルな取り組みを求める人も多くなってきており、そういったものを求めている人のライフスタイルに合わせて、商品を作っていきたいと考えています。
-会社のビジョンをソーシャルプロダクツとして体現化されているのは、素晴らしいですね。商品製作において、特にこだわった部分や特徴はどんなところでしょうか。
ソーシャルグッドなストーリーがあるから買うというのではなく、シンプルにかっこいいから買いたいと思ってもらえるような商品にしたく、クオリティやデザインにかなりこだわりました。素材も原料の中で一番いいコットンを、特別に綺麗な糸に紡いでもらい使用しています。ソーシャルグッドやエシカルな価値観・取り組みは、感度が高い人は意識をしているものの、まだまだ経済圏としては小さいです。その中でだけでおさまっていては、価値観・取り組み自体が広がっていかないと思います。そのため、一般の人もシンプルにかっこいい、面白いと感じ、手にとってもらえる最高のクオリティの商品を追求し、それに付随する形で背景にある「いいこと」を見せる形が大事だと考えています。
-実際の顧客からの反応はいかがでしたか?
新しい価値観に対して感度が高い人、本質志向の人には特に共感していただいています。また、他のオーガニックコットンの洋服ですとカジュアルなものが多いのですが、弊社の商品は細い糸で織り上げるフォーマルシャツとなっており、他にはない商品として売りになっていると思います。その他、新しいことをしているという企業姿勢には、業界紙さんなどのメディアも注目してくださり、紙面に取り上げてもらうこともありました。
-その他にも、「ReFABRIC」「FALKLAND to TOKYO」といったソーシャルなシリーズにも取り組まれていますが、こちらについてもお聞かせください。
「ReFABRIC」は商品化されずに行き場を無くした生地を用いたオーダースーツです。アパレル産業には、廃棄問題があります。代表的な例では、昨年、バーバリーが大量の売れ残り商品を焼却処分したことが批判され、焼却処分の中止を決定しました。そういった製品化の背景にもフォーカスしてもらえるよう作られたのがこの商品です。さらに、我々は、オーダーメイドの会社として、在庫ロス0(ゼロ)、廃棄ロス0(ゼロ)も目指していきたいと考えています。
また、「FALKLAND to TOKYO」は、生産地・生産者の可視化にこだわり、トレーサビリティを追求したスーツです。現在、日本人は1年間で、服を10kg購入し、9kg捨てていると言われています。理由は様々だと思いますが、その1つは服への愛着がないからではないでしょうか。誰がどんな思いで作っていて、どんなストーリーがあるのかを伝えることは、洋服を大切に扱ってもらう上でも重要だと考えています。
-最後に、今後の展望をお聞かせ下さい。
引き続き、会社のビジョン「誰もが自分らしいライフスタイルを自由にデザインできるオープンな社会をつくる」を追い続け、体現するような商品を作っていきたいです。現在は、店頭に持ち込んだ自分のいらなくなったスーツが、リサイクルされて戻ってきて、買えるというような、アップサイクルスーツの商品開発を進めています。そのようにソーシャルグッドな価値観・取り組みを、自分ごと化して体験してもらえるような、企画づくりを模索し、挑戦していきたいです。
-ありがとうございました。
【参考】
『株式会社FABRIC TOKYOHP』(https://corp.fabric-tokyo.com)