夏休みは、帰省や旅行のご予定がある方も多いのではないでしょうか。今回は、旅行や仕事には欠かせないバッグ類の製造・販売を主たる事業とする株式会社クイーポをご紹介します。主幹ブランド「genten(ゲンテン)」での自然環境に配慮した商品作りと、新ブランド「GLEAN&Co.,Ltd.(グリーンアンドコーリミテッド)」での新たな取り組みについて、広報室の岡田様にお話を伺いました。
岡田様 KUIPO本社1階のショップにて
(写真右はgentenの代表作バッグ)
―「ファッションとエコ、環境との共生」という企業理念を掲げていらっしゃいますが、商品の製造販売における具体的な取り組みを教えてください。
当社は間もなく創業50年目を迎えますが、創業当時より「人を愛し、自然を愛し、ロマンを求める」を社訓に掲げてきました。高度経済成長期に、多くの自然が失われるのを目の当たりにした創業者(現会長)が、ファッションとエコという2つの遠いものを近づける取り組みをしてみようと、1999年に立ち上げたブランドが「genten(ゲンテン)」です。
「genten」のコンセプトは①環境に配慮すること ②限りある資源を大切にすること③長く愛着を持てるモノづくりを目指すことの3つです。具体的には、環境にやさしい素材を使うこと、原料を余すことなく有効に利用すること、リペアサービス等を通してお客様に1つの商品を長くお使いいただくこと、などが挙げられます。
―環境にやさしい素材とはどういうものなのか、詳しく教えていただけますか。
「genten」商品の主たる素材となる革は、植物性タンニン(ケブラッチョや栗などのタンニン渋)で鞣す(なめす)方法を用いています。植物性タンニン鞣しの革は、現在主流となっているクローム鞣しと比べ、革の加工に2~3倍の日数を要します。しかし、クローム鞣しの革のように、革に重金属を含まないため、植物タンニン鞣しの革は、加工段階でも環境にやさしく、使用後も土に還すことができるという利点があります。
また、植物性タンニン鞣しの革は、収縮性が少なく耐久性に優れ、使い込むほどに自然な風合いが増してくるという特徴があります。お客様の中には、この風合いの変化を楽しみに、リペアサービスを利用しながら、一つの商品を長く愛用してくださる方も多くいらっしゃいます。
―その「genten」の新ラインとして始められた「GLEAN&Co.,Ltd.」のコンセプトや商品について教えてください。
英語のglean=回収する・拾い集めるという意味があるように、「GLEAN&Co.,Ltd.」は、「限りある資源から、捨てるものを極力無くし、無限の可能性を創造する」ことをコンセプトにしたブランドです。捨てるものを極力無くすために、リサイクル・リユース・リメイク素材や、環境に配慮した再生可能なあらゆる素材を使用しています。これまで、ベルギーの軍用テントのデッドストックやフランス製リネンのベッドカバー、使い古したネクタイ、革を裁断した際に残る落ち革、その他様々な素材で作られたバッグや小物等を製造販売してきました。このような素材で商品を製造することで、本来捨てられるはずだった素材に新たな命をもたらすことができます。そして、このような素材ならではの、独特の風合いやユニークさを持った「GLEAN&Co.,Ltd.」の商品が出来上がります。
フランスのデッドストック枕カバーを素材に作られたバッグ
―「GLEAN&Co.,Ltd.」の顧客層や人気の商品について教えてください。
男女問わず、概ね20~30代です。価格が手頃で、ファッション性の高いデザインの商品が多いということが大きな理由であると考えています。
一番人気は「マルチクラッキングゴート」というバッグで、このバッグは革素材を作るときに通常破棄される薄い表皮を、布地に貼り合わせた素材で作られています。そのため、バッグによってその表情が様々です。また、バッグの持ち手にも落ち革を利用しているので、商品ひとつひとつの色や素材が異なります。様々な表情のバッグの中から、自分のお気に入りのオンリーワンを見つける楽しさがあることも、お客様にご支持いただいている理由のひとつだと思います。
商品や顧客層からも分かるように、出店先も、「genten」のような百貨店や路面店中心ではなく、情報発信力のある商業施設のイベントブースや若者向けのファッションビル等をメインにしています。現在は札幌と渋谷に常設店舗を設けています。
一番の人気商品「マルチクラッキングゴート」
―「GLEAN&Co.,Ltd.」の立ち上げや運営に際して、苦労されたことや、それをどのように乗り越えられたのかを教えてください。
ユーズド素材、リサイクル素材ならではの苦労があります。例えば、ユーズドのネクタイは洗浄・消臭等の処理加工が必要になりますし、形状もまちまちです。また、ヨーロッパの民家の軒先で使われている日よけシェードは、全て端材なのでどれも生地の幅が30cm程度しかありません。通常は、デザイナーが商品デザイン作るのと同時に、それに合った素材を別チームが調達するというフローですが、「GLEAN&Co.,Ltd.」は先に素材があって、それをもとに商品デザインを決めます。そのため、「GLEAN&Co.,Ltd.」のデザイナーは、自ら素材の調達も行い、デザインや、バッグとしての機能性を考えながら素材を仕入れています。
こうして仕入れた素材―例えばネクタイは長辺を縫い合わせて1枚の生地のように仕立てたり、シェードの端材は縦横を工夫して模様に面白味を持たせたりすることで、本来弱点である性質を、臨機応変に商品の特徴として生かせるよう工夫を重ねています。
ヨーロッパの日よけシェード端材(下)と、その素材で作られたバッグ(上)
―商品の社会性に関しては、どのような情報発信をしていらっしゃいますか?
「GLEAN&Co.,Ltd.」の社会性に関しては、店内のPOPや商品パンフレット等に素材の特徴としての説明書きをしている程度で、社会性を大きく謳ってはいません。なぜなら、ファッション性の高い商品は、お客様が気に入ってご購入され、ご愛用していただいてこそ、その価値を発揮するものだと考えているからです。社会性のある商品だから、という理由でご購入いただいても、それがお客様の好みやライフスタイルに合っていなければ、長くご使用いただけませんし、次の購入にも繋がらないと思います。我々は「GLEAN&Co.,Ltd.」の商品のデザインや品質を気に入っていただいた上で、ご購入前でも後でも、その商品が環境に配慮した商品であるということを知っていただければ十分だと思っています。そのためにも、商品自体のデザインや品質に対する努力を怠らず、日々努力を重ねなくてはならないと思っています。
―今後の目標を教えてください。
初めは軍用テントのデッドストック素材のシックな商品シリーズからスタートした「GLEAN&Co.,Ltd.」ですが、ポップなデザインや明るい色使いの商品を展開するにつれ、多くのお客様に手に取っていただけるようになってきました。今現在は、2店舗の出店ですが、ファッションを楽しむような場所―例えば駅ビルやファッションブランドが多く入る商業施設等に、徐々に出店を増やしていきたいと思っています。ただ、素材の調達を考えると、急に量産体制に入ることは難しく、出店もそのバランスを見ながら進めたいと思います。それと同時に、「GLEAN&Co.,Ltd.」のファンとなってくださるお客様の声を聞きながら、共に「GLEAN&Co.,Ltd.」というブランドを大事に育てていきたいと思います。