自然環境の破壊・汚染、地球温暖化等の様々な要因により、生物多様性が、これまでにないスピードで失われていると言われています。生物多様性保全の重要性は、今や世界の共通認識であると言えます。
今回は、企業などを主な対象として、生物多様性の保全や回復に資する取り組みを定量的に評価、認証する制度である「JHEP 認証シリーズ」をご紹介します。
●認証制度の特徴は?●
JHEP は、1980 年代に米国内務省により開発された、自然環境(ハビタット:野生生物の生息地)を定量的に評価する手法「ハビタット評価手続き(HEP)」をもとに、(公財)日本生態系協会が改良を加えて新たに構築したものです。JHEP 認証シリーズには、事業主体が申請するハビタット評価認証(JHEP)と工事受注者が申請する請負工事型ハビタット評価認証(CHEP)の2タイプの認証があり、事業・工事の面積規模や計画中・実施済みに関わらず、生物多様性保全の取り組みを定量評価できることが特徴です。JHEP 認証は、事業実施によって得られる「将来 50 年間の自然の価値」が、規定の「評価基準値」を上回る場合、生物多様性へ影響を与えない事業、あるいは生物多様性の向上に貢献する事業として認証されます。
●社会的課題との関わりは?●
2010 年に名古屋で開催された生物多様性条約の締約国会議(COP10)において、2020 年までに生物多様性の損失を止めることが決議されました。ただ、残念ながら、日本の生物多様性は、まだ悪化傾向にあると言わざるを得ません。これは、生物多様性が漠然としたイメージで捉えられ、開発事業による損失量が見えづらいことが、原因のひとつです。この認証制度は、生きものが単に「いるか、いないか」ではなく、科学的データに基づき、生きものの「潜在的なすみやすさ」という視点で定量評価することで、生物多様性の損失や保全の状況を見える化します。これにより、生物多様性の保全や回復に資する効果的な取り組みを判別し、その普及を後押しすることができます。
●認証を取得した取り組み・取得状況●
2009 年 2 月から今日まで、計 17 の事業(取り組み)がJHEP(うち1つは CHEP)認証を取得しました。JHEP の評価ランクでは、最高の AAA が 2 事業、AA+~AA が 3 事業、A が 9 事業、将来見込み型の P が 2 事業です。認証を受けた事業の実施組織は、不動産ディベロッパーが中心ですが、その他、製造業や商社、金融機関、リサイクル業といったさまざまな業種でも認証が取得されています。
●ご担当者様からのコメント●
環境に配慮した開発と銘打ちながら、実際には、深刻な自然破壊を伴う事例は今でも少なくありません。事業後だけを見れば、綺麗に緑化されたエコな施設と錯覚しがちですが、本当のところは、事業前の生物多様性価値と比べてみなければ分かりません。
本認証制度では、事業の前後における生物多様性の価値を客観的に評価し、事業後の価値が事業前を上回るものだけを認証します。事業者にとっては有効な PRとして、消費者や株主にとっては本物の環境企業を見分けるツールとしてご活用いただけます。