「APSP Students 奮闘記」は、ソーシャルプロダクツの普及推進に取り組む学生「APSP Students」の活動をご紹介するコーナーです。今回は、特定非営利活動法人パルシックとのコラボレーションで、フェアトレード商品のプロモーションに取り組む専修大学商学部神原ゼミナールの太さん、山崎さん、橋本さん、治田さん、渡辺さん、福田さん、大谷さん、平野さん、杉山さん(以降、敬称略)の9名に、フェアトレードに関心をもったキッカケや活動内容、学生ならではの工夫、ゼミでの学びを今後どう活かしていきたいかなどについて、具体的にお話を伺いました。
パルシックは、地域で暮らす人と人が、国家の壁を超えて助け合い、支え合い、人間的で対等な関係を築くことを目指して活動するNGOです。スリランカの小規模紅茶農家をフェアトレードで支援し、通常栽培からオーガニック栽培に転換を促進することで商品化した「アールグレイ紅茶」は、「ソーシャルプロダクツ・アワード2014」にて特別賞を受賞しています。
―神原ゼミの研究テーマや雰囲気を教えてください。
治田:神原ゼミでは、商品学やマーケティングを学びながら、企業・団体さんとコラボレーションさせていただき、実際の商品を普及推進する企画を立案・実行しています。とくに、商品の背景にストーリーがあって共感できるソーシャルプロダクツを対象にしています。
神原ゼミのコンセプトは、「子ザルの放し飼い」です。これは、先生が指示を与えずに、学生が自分たちで目標を設定して、「何がしたいのか、何ができるのか」を考えて行動することを意味しています。子ザルは私たちです笑
山崎:ゼミの雰囲気は、自分からこれをやりたいあれをやりたいと発言する、明るくて前向きな人が多いです。そういう人たちが集まっているからこそ、様々な企画やイベントが生まれています。
現在、神原ゼミには3つのチームがあります。木内籐材工業さんとのコラボで籐(とう)製アクセサリーのデザイン・販売に取り組むチーム。株式会社ロータスコンセプトさんとのコラボで大麦ストローを使った環境意識の啓発に取り組むチーム。そして私たち、特定非営利活動法人パルシックさんとのコラボでフェアトレード商品のプロモーションに取り組むチームです。
―みなさんが、フェアトレードに関心を持ったキッカケを教えてください。
治田:自分は、ゼミに入ってからフェアトレードについて知りました。もともと、商品開発などに携わりたいと思っていたので、パルシックチームでフェアトレード商品のプロモーションをしています。フェアトレードについて学んでいくうちに、社会に貢献したいという気持ちが強くなっていくのを感じています。
山崎:ゼミの先輩たちからお話を伺ったとき、本格的な販売イベントを積極的に行っていることを知りました。商品としての魅力と、フェアトレードの意義をどのようにプロモーションすれば、お客さまに購入してもらえるのかを試行錯誤する先輩たちの姿が、実践的で楽しそうに見えたのがキッカケです。
杉山:ゼミの先輩たちから、初めてフェアトレードについてしっかりと学びました。フェアトレードが入り口になっているというよりは、神原ゼミの実践的に学べる環境に魅力を感じたのがキッカケだったように思います。ゼミに入ってからはフェアトレードについて更に知識を得て、関心が高まりました。
大谷:マーケティングや商品学を学ぶ他のゼミでは、商品がどれだけ売れるかに焦点を当てることが多いです。パルシックチームでは、商品がフェアトレードに象徴されるように、売上にとどまらない課題解決の機能や社会的な役割を持っていることを実践的に学べます。そこに魅力を感じたのがキッカケです。
専修大学商学部 神原ゼミナール パルシックチームのみなさん
※取材は新型コロナウイルス感染症に鑑みてオンラインで行いました
―商学部らしいキッカケの数々ですね。どうすればフェアトレードが若者に広まって行くと思いますか。
平野:若者はSNSをよく使うので、そういった身近な導線からフェアトレードの認知を広げることが重要だと思います。パルシックチームの活動でも、SNSを積極的に活用しています。
渡辺:初めは社会貢献が足を踏み入れづらい分野に思えていました。しかし、私たちが活動を通して売っているフェアトレード紅茶のワッフルなども皆さんが日常的に食べるものです。日常の買い物1つで社会貢献につながるという気づきを与えられると、認知されていくのではないでしょうか。ですので、料理やギフトなど日常で簡単に取り入れられる形で、フェアトレードの魅力を伝えていきたいです。私自身も、フェアトレード商品を知ってから、より広く世界の問題に目を向けるようになりました。最近、普及しているマイバックの使用などに絡めて、情報発信していくのも良いかもしれません。
福田:フェアトレードのコーヒーを飲んだ時、安いインスタントコーヒーよりもやっぱり美味しいと感じました。フェアトレード商品は高いから買わないという人が多いですが、とにかく一度試してもらうことが大事なのではないかと思います。値段以上に美味しい!ということに気づいていただければ普及していくはずです。
太:若者にとってフェアトレード商品は値段が高く、手に取りづらいという現実があります。まずは、デザインなどの工夫で目につきやすいパッケージを作成し、手に取ってもらうまでのハードルを越えることが重要ではないでしょうか。その上で、商品説明、SNSやWebへの誘導を通して、フェアトレードの魅力を共有していくことが効果的だと思います。
―プロモーションに取り組むみなさんならではの実践的なご意見ですね。それでは、パルシックチームの具体的な活動目的や内容を教えてください。
杉山:活動目的は、商品を売ることではなく、フェアトレードを知ってもらうことです。その手段として、フェアトレード商品を買ってもらうことや、SNSなどで情報を発信することを行っています。より多くの人に買っていただけるように、インターネットで購入できるようにしたり、パッケージのデザインを考えたり、自分たちで料理をして様々なアレンジレシピを開発したりしています。
現在は新型コロナウイルス感染症の影響で、商品の販売イベントが中止になり、なかなか出店できないので、インスタグラムをメインに、楽しみながらフェアトレードを知ってもらえるコンテンツを発信しています。
―インスタグラムで反響が大きかった投稿内容をご紹介ください。
大谷:フェアトレードデーに、改めて私たちの活動を紹介した投稿には一番いいねがつきました。やはり、記念日を設けることの意義は大きく、世間のフェアトレードに対する関心の高まりを感じました。
閲覧者の数を分析すると、コンビニやスーパー、スターバックスで売っているフェアトレード商品を紹介した投稿が、最も反響が大きかったです。身近な商品や知っているお店と、フェアトレードがつながっていると実感してもらえると、広がりやすいことを感じました。
また、パルシックさんからは私たちのインスタグラムが稼働することで、パルシック公式アカウントのフォロワーが伸びているといった反響もいただきました。
フェアトレードデーの投稿
身近なフェアトレード商品の紹介投稿
―活動での苦労や、やりがいを感じたエピソードなどはありますか。
大谷:インスタグラムの投稿計画づくりは大変です。内容が被らず、タイムリーなネタを考えなくてはいけません。みんなで何時間もミーティングをして、とにかく多くのアイデアを出し、それらを組み合わせたりしながらネタ作りをしています。苦労して作成した投稿にたくさんの反響があったときは、やりがいを感じます。
治田:活動当初、フェアトレードについて勉強不足でした。最初に参加した販売イベントでは、パルシックチームとして立たせていただいているのに、自分たちの発信力がなく、お客さまにフェアトレード商品の魅力を十分に伝えることができませんでした。その反省を活かして勉強会などを積極的に行い、知識をつけることで、発信力を高め、色々なアイデアを出せるようになりました。
山崎:やりがいを感じたエピソードは、専修大学の学園祭でフェアトレード紅茶のワッフルを365個販売したことです。先輩たちの販売実績である300個を上回ったこと、それをみんなで成し遂げたことは達成感がありました。
橋本:上智大学の東ティモールフェスタへの参加が貴重な思い出です。東ティモール人と写真を撮ったり、ダンスを踊ったりしました。グローバルな交流をもてたのは、フェアトレード普及推進の取り組みならではの経験だと思います。
―学園祭で365個の販売はすごいですね。商品販売の際、販売・接客で意識・工夫している点はありますか。
橋本:学園祭の若者が集まる場では、可愛いパッケージやアールグレイの紅茶であることを売りにして販売しています。商品パッケージも私たちがリニューアルしました。その上で、フェアトレード商品であることや買うことによって社会貢献できることなども伝えるようにしています。
フェアトレードのアールグレイ紅茶ワッフル
治田:国際協力系のイベントなどでは、年上のお客さまが多いので、大学生が活動していることに興味を持ってくださいます。「何をやっているの?」と聞かれることが多いので、分かりやすくフェアトレードを説明できるようにしています。
具体的には、「日本は裕福でアフリカは豊かじゃないイメージがありませんか」というように話を始めて、「チョコレートや紅茶などはアフリカの大人や子どもまでもがお金を全然もらえずに働いていて、その分日本では安く売られているんです。値段が少し高くなってしまっているのはその人たちに適正なお金を支払っているからで、とても美味しいフェアトレードの商品です。」
「ガーナのチョコは100円で買えますよね。それはアフリカの労働者がお給料をもらっていないんですよ。フェアトレード商品だと、そういった労働者も支援できます。」といった相手に生産者のことを想像してもらえる語り口調を意識しています。
想像が共感につながり、社会貢献できる割には安い!買ってみようかしら…と興味を示してくださる方が多いです。
販売イベントの様子
―SNS発信や商品販売の他にも、フェアトレードを知ってもらうための工夫をされていたら教えてください。
渡辺:イベントなどで話しかけてくださる方が多くいらっしゃいますが、限られた販売スタッフと時間の中では、必ずしも自分たちの活動を十分に伝えることができませんでした。そこで、フェアトレードや私たちの活動を知っていただくためのカードを作成しました。
気軽に手に取っていただけるよう、表面を淡い色で可愛いデザインに仕上げました。インスタグラムアカウントに飛べるQRコードも付いています。裏面にはフェアトレードについての簡単な説明を掲載しました。商品を買っていただけなくても、少し読んでもらうだけでフェアトレードについて知ってもらえるきっかけになればと思います。親近感を持ってもらうために自分たちの写真もつけました笑。
フェアトレードや活動を紹介するカード
―とても素敵なデザインですね。今後の課題や展望はありますか。
太:コロナの影響で販売イベントなどが中止になってしまいました。オンラインで最大限に活動することが課題です。より多くの方とつながれるよう、ワンタッチで商品購入ページに飛べるインスタグラムの商品タグの利用を考えています。インスタグラムの様々な機能を使って、見てくださっている方と相互に関わっていきたいです。
福田:また、パルシックの新商品であるフェアトレード紅茶の羊羹もプロモーションしていきたいです。また構想段階ですが、片手で食べられること、1つでしっかりとエネルギーを摂取できること、紅茶の風味がする食べやすい味であることなどを踏まえて、スポーツをする人に向けた企画を立案中です。ワッフルと並行して羊羹の販売にも力を入れたいと思っています。
アールグレイ紅茶羊羹
杉山:今後の活動では、コロナの影響で活動が制限される今だからこそ出来ることを模索していきたいです。ピンチをチャンスだと捉え、新しいことにも挑戦できたらいいなと思っています。
―みなさんの更なるご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
【参考】