株式会社フォレストコーポレーション(長野県伊那市)の注文住宅「工房信州の家」は、施主が山に入り、木を選ぶところから始まる「お客様参加型の家づくりサービス」です。信州の木材を使用し、多くの信州の職人が携わるほか、施主が家づくりに参加する「ひとてま工房」のプログラムも用意しています。パッシブデザインの「エアパスソーラー工法」採用で冷暖房使用も最小限に。「信州の自然と調和した家」により、そこに住む家族のスローで豊かな暮らしの創造に寄与しています。今回は同社企画営業本部 鷲澤仁美さんにお話を伺いました。
―「工房信州の家」は写真で見ても木の温もりが感じられ、穏やかに豊かに暮らせそうです。このような家づくりをするようになった経緯を教えてください。
当社は1960年創業、建設会社として高度成長期に公共事業などを手掛けてきましたが、1987年に住宅部門を設置し「大量生産・大量消費」時代からの転換を模索していました。1996年、創業者の二代目である現在の社長小澤が就任後、2000年より「信州の木で信州の家を作る」という取り組みを始めました。
―公共事業や大型プロジェクトが主体の建設会社から生活者と向き合う住宅部門へということだけでも大きな転換ですね。
公共事業はトップ営業で、現場の設計・施工担当者の創意工夫を活かせる余地が少なく、社員がやりがいを感じにくい問題がありました。かつてリクルートコスモスに在籍し、入社間もない社員が大きな仕事をして成長していく環境を経験してきた社長には、若い社員が活躍できる会社にしたいという思いがあり、個人の住宅分野への本格的な進出をはかりました。
―「工房信州の家」という事業のスタートは、「社員のため」という意義も大きかったのですね。しかし前例のない商品を開発するということで苦労されたのではないですか?
最初は大変でした。信州の木を使いたいと思っても、当時県産材は市場になく、入手ルートもありません。林業関係者に会いに行き、新事業の理念を伝えて木材を切り出し、流通に乗せていただくところから始めました。少しずつ林業者や製材所の方と「家づくりグループ」を形成していき、2003年11月、長野県の「信州木づくりの家」整備推進事業による地域住宅産業グループとして認可されました。
―信州の木の供給体制を確立していく過程は、そのまま地域の林業の活性化につながっていますね。一方で注文住宅の売れ行きはいかがでしたか。
最初は施工例も少なく、お客様に「工房信州の家」を伝えることも難しかったのですが、次第に浸透していき、2006年くらいから受注が増えました。今度は木材の供給が間に合わなくなり、2007年、駒ケ根に「天然乾燥ストックヤード」を開設しました。県産材を当社で仕入れ、人工乾燥より時間はかかるが美しく強い木材になる「天然乾燥」により、安定的に良質な木材を確保できる体制を整えました。
―「信州の木を使う」ことを含めた「工房信州の家」の特色を教えてください。
事業スタート当初から「4つのこだわり」を掲げています。
第1に、信州の木を使うこと。
第2に、木材以外の材料でも化学物質を使わず、自然素材を使うこと。
第3に、エアパスソーラー工法。
第4に、広がり間取り、です。
第2の自然素材としては珪藻土や漆喰、和紙などがあげられます。信州のきれいな空気を室内でも感じて「深呼吸のできる家」です。第3の「エアパスソーラー工法」とはパッシブデザインのひとつで、断熱材と外壁の間に「エアパス」という空気の層を作り、そこを太陽熱で暖められた空気が循環するというもので、冬あたたかく、夏は涼しく、エアコン不要、または使用時間が短くなります。第4の「広がり間取り」は、部屋全部が居間を中心につながり、家族の成長の変化に対応する可変性も持たせた設計です。
―家づくりの過程に施主とその家族が関わることも大きな特色ですね。
「選木ツアー」では、お客様のご家族、山師さんで山に入り木を選び、お客様の手で伐採。木の輪切りを記念にお持ち帰りいただきます。「ひとてま工房」では、珪藻土を塗ったり、家の一部となるステンドグラスや照明をご家族で製作します。
―職人さんやお客様の感想や反響を教えてください。
選木ツアーでは倒木の大きな音の迫力を体験した瞬間、お客様が涙することもあります。自然や山を守る人への感謝を実感するそうです。通常なら出会うことのないエンドユーザーのこうした姿に山師さんは改めて自らの仕事の価値を認識し、意識ががらりと変わったと教えてくれました。引渡後の家で暮らすお客様からは、「無垢の木の風合いが変わっていくことに愛着を感じる」「家の手入れをすることが楽しい」といった声をいただいています。昨年「日本サービス大賞・地方創生大臣賞」を受賞したとき、審査員の先生方から「建設業というより、建設を通して豊かな暮らしを提供するサービス業」との講評をいただきました。
―最後に、今後力を入れて取り組んでいきたいことはありますか。
お客様のアフターフォローを今以上に強化していきたいと考えています。住まわれているオーナー様向けの「普段のお手入れ」「1年後のメンテナンス」の方法をご紹介するイベントなど、当社の側からお客様へ働きかける機会を増やし、家づくりの期間だけでなく、家に暮らす時間を末永く豊かに過ごすことのお手伝いに力を入れていきます。
―ありがとうございました。
株式会社フォレストコーポレーション
http://www.forestcorp.jp/index.html
工房信州の家
http://www.kobo-shinshu.com/index.html
2013年~2016年 グッドデザイン賞5回連続受賞
http://www.kobo-shinshu.com/co_navi/article/ioW20150323002013-695.html#maki
第1回日本サービス大賞【地方創生大臣賞】受賞
http://www.kobo-shinshu.com/staff/co_mame3/article/kaQ20160614132539-157.html