ローランズ.は社会的役割を基盤としたお花屋さんです。花や緑を扱う会社だからこそできる持続可能な社会貢献活動として、廃棄のカーネーションを利用した古紙の活用を推進しています。さらに、花を通じた障がい者雇用のあり方を変えることを目指しています。それらの活動を模範にしようと多くの企業が見学に訪れ、そのノウハウやあるべき姿勢を学んでいるそうです。まさに、ソーシャルビジネスのモデル企業といえます。
そんなローランズ.の開業に至るまでの経緯や取組みへの思いなどについて、代表取締役の福寿満希様にお話を伺いました。
―まずは、ローランズ.開業のきっかけを教えてください。
大学時代に特別支援学校の免許を取得したので、教育実習の際に障がいを持つ子供達の学校に伺ったことがありました。その際、障がいを持った子供達は学校を卒業したあと就職を希望していたとしても、15%しか就職できないという現実を知り、衝撃を受けました。就職できたとしても単純作業の仕事が多いそうで、もっと選択肢が増えたらいいな、いつかこういったことを解決できたらいいなと、考えるようになりました。
大学卒業後は、大学で専攻していたスポーツマネジメントの会社に就職したのですが、プロ野球担当となり野球選手の社会貢献などについて携わり、数字を追うだけの仕事ではなく社会の役に立つ仕事ができることの素晴らしさに感動しました。しかし、その後の人事異動でその仕事から離れてしまい、社会貢献とは別の部署に配属となったことを契機に、かねてよりチャレンジしてみたいと思っていたソーシャルビジネスでの起業を決心しました。
―もともと社会に貢献したいという気持ちをお持ちだったのですね。「ソーシャルビジネス」と「お花」が結びついたのは何がきっかけだったのでしょうか?
大学時代に心理学の授業を受けた際、「花や緑が人の心に影響を与える」ということを学んだのを思い出して、これだ!とつながった瞬間があったんです。私自身も通勤途中のお花屋さんの前を通ると不思議と癒されることが多かったため、「お花や緑を通じて社会貢献をするビジネスにしたい」とだんだん形になっていきました。起業して1年ほどは他のお花屋さんと変わらないビジネスをしていましたが、起業2年目に、母の日の直後に大量のカーネーションが廃棄になってしまい、「せっかくのお花なのにもったいない、何かに活用できないか」と考えたことから再生紙のビジネスが始まりました。最初は肥料として使うなども考えたのですが、茎の部分に繊維が多かったことから、「再生紙として生まれ変わらせることはできないか?」と考え、再生紙工場を探してお願いをしました。
―そうして生まれたのが「Flower Ring -花の再資源化Project-」なのですね。再生紙工場としても初めての試みだったのではないでしょうか?
はい。初の試みにも関わらず、手すきの和紙でテストする段階から精力的にご協力をいただきました。カーネーションの茎が柔らかかったこともあり、最初は難しいかもしれないと言われましたが、最終的にはうまくいって良かったですね。まずはハガキと名刺を作るところから始めて、今ではスケッチブックとクレヨンをセットにして百貨店様に置いていただいたり、ギフト袋の製作にも使用したりするなどその用途が広がってきています。
―先ほどご挨拶の際に頂いた福寿様の名刺がそうですね!言われなければ再生紙とわからないくらい綺麗な普通の紙に見えます。
その名刺はカーネーションの含有量が10%のものなので、よく見ないとわからないですよね。茎や花びらの色味は漂白しているからということもあると思います。最大で30%くらいまで含有量を増やすことができますが、名刺などを発注いただいているお客様からは「再生紙だとわからないくらいの方がいい」と言われるので、今はまだ10%のものを多く生産しています。
―「再生紙とわからないくらいがいい」というのはどういうことでしょうか?
「再生紙を使うことが当たり前になってほしい」と考えている方が今のお客様には多いようなのです。自然と日々手にする紙が再生紙となることが理想ですね。現在ではこの再生紙を利用した名刺を複数社のお客様にご利用いただいています。
―ローランズ.は障がい者雇用にも力を入れているとお聞きしました。障がいのある方々が活躍できる職場づくりにおいて、大切なことはありますか?
会社員時代の上司に「一番の社会貢献は雇用を作ることだ」と言われたことが起業してからもずっと心に残っていて、3年目から障がい者雇用を開始しました。障がいを持った方を雇用すると、どうしても必要以上になにかをしてあげなければならないと考えすぎてしまうことも多いと思いますが、そういったことはあまり気にしないようにしています。「障がいがあるから何かしてもらって当たり前」という考えに対しては「違うよ」と言うし、「障がいがあるから社会的な弱者」だという扱いもしません。「1人の社会人」として接することを大切にしています。もちろんかける言葉の配慮などはしますが、基本的には「働くって楽しいよね」とみんなが感じてもらえることを大切にしています。
―最後に、今後の展望をお聞かせ下さい。
会社の規模をただ大きくする、といったことは考えていません。多くの企業様が見学に来てくださるのですが、その後自社に何を持ち帰ってもらえるのかをいつも考えています。多くの企業様が障がい者雇用については悩んでいるようですが、ダイバーシティも叫ばれる中で、私たちローランズ.としては、「障がいを持った方でも働く醍醐味を感じている」「楽しそうに働いている」ということを見て頂くようにしています。それを見学した他の企業の方が持ち帰って、もっともっと質の高い雇用に取り組む企業が増えるといいなと思います。ローランズ.だけで障がい者雇用をひろめることは現実的でないですが、まずは私たちがモデル企業となることで、企業全体がより多くの障がい者雇用を創出できるといいなと思います。
最近では修学旅行生の受け入れも行っています。小学生の子どもたちは、なかなか障がいを持った方と接する機会もなく、先入観で「怖い」という感情をもってしまう子も少なくありません。それを、「ちょっと苦手なことと得意なことの幅があるだけで、そんなにみんなと変わらないんだよ」ということを知ってもらい、弊社の障がいを持ったスタッフと共に花の製作を体験してもらっています。このような取り組みを通じて、社会全体に少しでも影響を与えることができるといいなと思います。
―ありがとうございました。