2021/10/14
ソーシャルプロダクツ・インタビュー
マイボトル習慣でプラスチックごみ軽減
未来のために「暮らし」を見直す無印良品の提案とは?
- 株式会社良品計画 -
株式会社良品計画では、自社で展開している無印良品の店舗などに誰もが無料で使える給水機を設置しています。また、繰り返し使える専用ボトルの販売に加え、利用者が給水をすることによるプラスチックごみの削減量を確認できるほか、給水箇所を地図上で確認できるアプリを開発するなどして、プラスチックごみを減らすためのサステナビリティな取り組みを実施しています。このようなプラスチックフリーなライフスタイルへの気づきを与える優れた取り組みが評価され、ソーシャルプロダクツ・アワード2021自由テーマ部門にてソーシャルプロダクツ賞を受賞されました。
今回は、給水機や給水機と連動させたアプリなどのサービスを通して、プラスチックごみ削減や利用者への意識啓発を行うサステナビリティな取り組みについて、当協会のインターン生である山本が、同社食品部飲料担当の関根様(以下敬称略)にお話を伺いました。
ペットボトルの水を「売らない」という選択
山本:数ある環境問題の中で、なぜプラスチックごみの削減に問題意識を感じ、このような事業をスタートさせようと思ったのでしょうか?
関根:昔は水は買うものではなく、蛇口から出る水道水を飲んでいたことを思い出したのがきっかけです。元々弊社ではペットボトル容器の水を販売していましたが、水道水をマイボトルに入れることでペットボトルのごみを減らせれば、プラスチックの削減につながるのではと考えました。プラスチックすべてが悪いとは思っていませんが、まずは1日1本でも空のペットボトルを減らすことを考えたい。給水サービスを通して持続可能な社会への第一歩として、「自分で詰める水」を提案したいという思いのもと、スタートさせました。
実際の店舗に置かれている給水機
山本:当サービスの特徴として、「持ち運ぶ」、「詰め替える」のほかに「つながる」という点を挙げておられますが、「つながる」の中でのポイントは、一体どのようなところでしょうか?
関根:サービスを始めるにあたって、無印良品の店舗にだけ給水機を設置しても、マイボトルを普及させるためには不十分だと思っていました。そして、マイボトルをもっと普及させるためには給水箇所を増やすことが必要だと考え、水道局や地方自治体の協力を得て、駅の構内や自治体の施設内にある給水箇所(飲み口型水飲栓を含む)をアプリにて、地図上に掲載することで、給水箇所がたくさんあることを認知してもらうよう努めました。このように、給水箇所をアプリに掲載することで、給水箇所と利用者をつなげて、利用者が給水箇所をわかりやすく把握できる工夫を行っています。
山本:給水サービスを始めるにあたり、工夫したことなどはありましたか。
関根:無印良品の店舗にある給水機は水道水を使用していることもあり、水道直結のタイプのものです。そのため、水栓から5m以内にしか設置できず、店舗内の目立たないところにある水洗い場などにしか設置することができませんでした。そこで、店舗内に給水機があることを大きく表示したほか、アプリで店舗内のどこに給水機があるかわかりやすく表記するなどして、給水機の存在をアピールできるよう工夫を施しています。その他にも、「お水を買いたい」と思って来店されたお客様が、「あ、お水は給水機で給水するしかないんだ。でも、給水するために900円近くする保冷マグを買うのは高いな」となってしまう場面も想定し、190円という手頃な価格で購入できる小さめのボトルを販売し、その場で給水できるようにしています。この容器を販売することで、「給水する」という習慣や「マイボトルを持つ」という習慣のきっかけになればと考えています。
容量:330ml 価格:消費税込190円
330mlの給水に使える容器。「水」を強調することで
「水を入れてください」というストレートな気持ちを表している。
関根:また、給水サービスを進める中で、水以外のほかの飲料水の容器などでは、まだペットボトルが使われていました。水は水道水を利用してペットボトルを減らせる工夫ができましたが、水以外の他の飲料水ではなかなか難しいのが現状でした。そこで、「プラスチックを使うのをやめる」という考え方ではなく、「資源を有効に活用し、環境にいいことってなんだろう」ということを第一に考え、他の飲料水の容器については、循環型素材であるアルミ缶に変更することにしました。ほかにも、給水サービスの開始時期を当初は去年の3月を予定していましたが、ちょうどその頃、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた時期でした。しかし、給水機の付近に消毒液を設置するなど、利用者に消毒を徹底させることで万全の対策を整え、7月1日から給水サービスをスタートさせました。このように給水サービスを始めるにあたって、様々な問題や懸念が生じましたが、まずは「できることから行動してみよう」という姿勢で取り組んできました。
関根さんが愛用する「自分で詰める水のボトル」は同僚のボトルと間違えないよう、
シールを使ってオリジナル柄にデコレーションされていた
一緒に取り組む仲間広がる。暮らしに「給水」習慣を。
山本:サービス開始から約1年が経過していますが、給水サービスのここまでの現状、成果について教えてください。
関根:2021年7月の時点で、給水機は全国の無印良品の店舗450店舗中310店舗に設置されています。また、給水サービスのアプリ(水‐MUJI Life)のダウンロード数は、15万5000です。このアプリでは、マイボトルを持ち歩くことで、利用者がどれだけプラスチック削減に貢献できているかがわかるように、自分のペットボトル削減量が出るようになっています。さらに、アプリの利用者全体の成果もわかるようにもなっています。全体の成果も見える化することによって、連帯意識をもってやっていただけると考えており、一人ではいまひとつ効果が小さいように感じても、みんなでやれば効果があるんだということを意識してもらえたらと思っています。
給水サービスのアプリ(水‐MUJI Life)
アプリのURL
企業・業界の枠を超えてつながり始めた「水プロジェクト」とは?
山本:サービスをもっと多くの人に知ってもらうために取り組んでいることや、今後取り組んでいきたいことはありますか。
関根:給水サービスを始めて約1年が経ちますが、利用者の方から「近所の無印良品の店舗にも設置してほしい」や「公共の場所に設置してほしい」など給水箇所を増やしてほしいとの要望を多くいただいております。そこで、さらに給水箇所を増やしていくために2021年5月に「水プロジェクト」を立ち上げました。無印良品の店舗で設置している給水機と同じものを新たに設置する取り組みなどを行っています。
また、熊本市と「水を通じた持続可能な社会の実現のための連携協定」を結び、熊本市内の7施設に6台の給水機を設置したほか、マイボトルの習慣化を促進する出前教室のサポートなども行っています。
山本:私は熊本市の出身なのですが、小学生の頃に水に関する学習をした記憶があります。その際に、「熊本市の水道水からはミネラルウォーターが出る」と言われるほど熊本市の水道水がきれいだということを教わりました。
関根:そのように前々から水に関する学習を熊本市内の小学校では行われていたようですね。今までは、熊本市内の水道水が美味しいことを理解してもらうためにペットボトルに入った水を配っていたようですが、今年からは空の「自分で詰める水のボトル」を配って、生徒だけでなく保護者の方とともにマイボトルを持とうという意識づけをしていく取り組みをしています。今後もこのような取り組みを通じて、給水サービスを広めていきたいと考えています。
山本:ありがとうございました。
公式HP:https://www.muji.com/jp/ja/stories/food/520171
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Instagram : https://www.instagram.com/muji_global/
[インタビューを終えて]
取材をさせていただいた良品計画様のブランドである無印良品は、今年で41年になるそうです。ブランドを立ち上げた当初から、「無駄なものを省く」というコンセプトを大切にして、41年間、様々な商品を世に送り出してきたと伺いました。「水を飲む」という私たちにとって当たり前のことの中にも、地球の環境にとっては無駄な部分が存在していることに気づき、給水サービスを通してプラスチック削減に取り組めたのは、「無駄なものを省く」という姿勢を徹底されてきた良品計画様だからこそできたのではないかと感じました。今後プラスチック削減のために、人々がマイボトルを持ち、様々な場所で給水を行っている光景が見られるよう、良品計画様の今後のお取組み・展開に期待したいです。
【プロフィール】
日本大学 法学部インターン生 山本修平
環境問題や障害者支援など日々の生活で何気なく聞く言葉を他人事のように感じられず自分に何かできることはないかと考え、APSPのインターンシップに参加。ライターとして、皆様に正確でわかりやすい文章を書くよう心掛け、私の書いた記事で世の中のに対する関心が少しでも高められることができればと思っています。