企業訪問インタビュー<br>―ニチバン株式会社「セロテープ®」―

2020/07/15

企業訪問インタビュー
―ニチバン株式会社「セロテープ®」―

 

 

家庭や学校、オフィスなど様々な場面で愛されている「セロテープ®」。実はプラスチックではなく、環境に配慮された天然素材から生産されています。同商品を展開するニチバン株式会社の代表取締役社長 高津敏明様に、APSP江口泰広会長(学習院女子大学名誉教授)がお話を伺いました。

新型コロナウイルス感染拡大の配慮からオンラインにて取材を行いました。
(写真左:ニチバン株式会社 代表取締役社長 高津敏明様、写真右:APSP江口泰広会長)

 

 

江口会長(以下江口):絆創膏の製造から始まったというニチバンですが、「セロテープ®」の生産を始めた経緯についてお伺いしたいと思います。

高津社長(以下高津):「セロテープ®」は発売70周年を迎えたロングセラー商品です。GHQから透明なテープを作ってほしいという要請を受けたのが始まりで、当時はプラスチックフィルムがなかったためセロハンを用いて製作しました。その後市販していくのですが、当時はものを貼るのに粘着テープを使う習慣がなかったため、透明のテープの使い方を普及していったという歴史があります。私自身も子どものころから、テープといえば「セロテープ®」というなじみがあり、そのような歴史を脈々と続けてきていると言えます。

また、「セロテープ®」を作るための主な原料は「天然素材」です。セロハンは、再生可能な植物資源である樹木(木材パルプ)を原料とした、天然素材のフィルムです。粘着剤の主原料には天然ゴムや天然樹脂を、巻心には再生紙を使用するなど、ここ数十年で問題になっている環境への配慮をずっと行っています。

 

 

 

江口:環境への配慮という点でこの商品は非常に評価に値する素晴らしい商品だと思います。勉強不足で、テープはケミカルなものとばかりと誤解していました。価格が安い石油由来のOPPテープではなく、天然素材にこだわっているのには何か理由があるのでしょうか。

高津:セロテープ®は、1948年の発売当初から一貫して植物性の原料を使用しています。OPPテープとは、ポリプロピレンフィルムに主にアクリル系粘着剤を塗布したテープのことですが、昨今はOPPテープの方が圧倒的に安価で、機能も向上しています。手切れの良さや粘着性の高さなど、「セロテープ®」ならではの良さがあったのですが、プラスチックテープとの競合が激しくなっています。

今後の経営のためにOPPテープに転換しても良いのでは、という議論もありました。しかしそこに手を出すと環境に配慮したエコ製品である「セロテープ®」の価値が失われる、自分で自分の首を絞めることになる、という考えのもと、天然素材の使用を貫いてきました。

 

江口:経営の理念を貫き、より良い社会のためにこのようなご判断をされたことは非常に評価されるべきだと思います。会社の行動指針にも「社会」を第一にあげられておられますね。

高津:はい。2018年ニチバンは100周年を迎え、その際に企業理念をもう一度見直しました。その際に、行動指針として5つあげる中で「社会」を一つ目にもってきたのは、「社会」を将来に向かって大事にしなければ、今後生き残っていけないだろうという考えがあってのことだと理解しています。

また基本理念についても、日本絆創膏工業会という元の社名にも含まれる「絆」という言葉を追加し、「私たちは絆を大切に ニチバングループにかかわる すべての人々の幸せを実現します」と改めました。今後はより一層この「絆」を大切に、皆様により良い生活を提供できればと考えています。

 

 

 

江口:「絆」という理念に非常に感銘を受けました。
ところで、「セロテープ®」は当協会が主催するソーシャルプロダクツ・アワード2020で年度テーマ「『プラスチックごみ問題』の解決につながる商品・サービス」部門で大賞を受賞されました。
改めまして、おめでとうございます。
その際の社内の反響はどのようなものだったでしょうか。

高津:ありがとうございます。改めて「セロテープ®」の影響力の大きさを感じ、さらに環境に配慮したものを作っていかなければならないと社内でも再認識しました。「セロテープ®」は他のプラスチック製のテープとは違う、ということは胸を張って言えることだと思います。

商品の社会性のアピールについては、さらに効果的なものがあるのではないかと考えています。「セロテープ®」の存在自体は知られていますが、天然素材であることは残念ながらあまり知られていません。環境配慮製品であることや高い品質であることをより一層知っていただくために伝えていきたいです。「セロテープ®」は2018年に発売70周年を迎えました。これからは”SDGs(持続可能な開発目標)”を商品の中心に据え、さらに環境配慮に向けた進化版を作っていくことも検討しています。

 

「セロテープ®」は、ソーシャルプロダクツ・アワード2020 年度テーマ「プラスチックごみ問題解決」に貢献する商品として大賞を受賞しました。
 
大丸東京店で行われたソーシャルプロダクツ・アワード2020展示販売会でも注目を集めました。

 

 

江口:最後に今後の課題や展望についてお教えください。

高津:まず流通企業への「セロテープ®」の導入をさらに進めていきたいと考えています。「セロテープ®」を使用していただいている企業をご紹介し、流通企業の社会性をアピールできるような環境づくりを進めています。

また、2030年までに海外市場への進出を30%に伸ばすことを目標としています。海外では、テープについては安価なOPPテープが主流であるため、「ケアリーヴ™」などのメディカル製品を積極的に売り出していきたいと考えています。

そして、顧客のニーズに合わせた商品をさらに展開していきます。私自身技術者だったので気持ちは分かるのですが、自分がいいものだろうと思って設計するのではなく、お客様のニーズにあわせて価値を作っていくということを意識するべきだと考えています。全社員それぞれの気付きを共有し、製品開発に異なる視点を与え、それをグローバルに展開していきたいです。

 

 

 

江口:社会性のアピール、海外進出等のさらなるご発展を期待しております。御社の素晴らしい取り組みにAPSPとしてもご支援をさせていただきたいと思っております。本日は貴重な時間をありがとうございました。

 

ニチバン株式会社
https://www.nichiban.co.jp/corp/

セロテープ®
https://www.nichiban-cellotape.com/

ソーシャルプロダクツ・アワード2020受賞「セロテープ®」
http://www.apsp.or.jp/product/%e3%82%bb%e3%83%ad%e3%83%86%e3%83%bc%e3%83%97/

(記事執筆:高橋さくら)

この企業について

ニチバン株式会社

東京都文京区関口2丁目3番3号

https://www.nichiban.co.jp/

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