2023/08/18
【ソーシャルプロダクツ・インタビュー】
顔がみえる生産者へのこだわり。ノーパンではける唯一無二の快適さ「ととのうパンツ®︎」
ー有限会社プラスチャーミングー
ソーシャルプロダクツのさらなる普及に向けて、2022年10月より慶應義塾大学SFC玉村研究会※とソーシャルプロダクツ普及推進協会にて共同プロジェクトを開始しました。同研究会でソーシャルマーケティングを専攻する学生が、ソーシャルプロダクツ・アワード(SPA)2023の独自評価軸を策定、SPA2023 において特にZ世代の共感度が高い優れた商品・サービスを選定し、情報発信にも取り組んでいます。
※慶應義塾大学SFC玉村研究会
玉村研究会では「ソーシャルマーケティングと価値共創」の研究活動を行います。ソーシャルマーケティングにまつわる理論や概念の理解に加え、実際の様々な事例の調査研究や、実践的なプロダクト開発などにも取り組んでいます。
プロジェクトで策定した独自評価軸を通じて、生活者の興味を引くキャッチーな商品名やコピーが記憶に残る「GOODインパクト賞」として学生から選ばれた「ととのうパンツ®︎」。
”実はノーパンです”のキャッチコピーが見た人の印象に強く残る、下着なしで過ごせるショートパンツ。製造は東日本大震災で被災した縫製工場にのみ依頼し、商品の発送は長野市にある就労支援事業所に依頼することで【関わる人が全員ハッピーになる循環】を目指す。
今回は、ととのうパンツ®︎が生まれたきっかけや商品のこだわり、魅力の伝え方について、開発者の中川ケイジ様(有限会社プラスチャーミング代表取締役)にお話を伺いました。
有限会社プラスチャーミング代表取締役 中川ケイジ様
インタビュアー・記事作成:
慶應義塾大学SFC玉村研究会
伊藤更彩(ビジコン参加をきっかけに、フードロスと生活者心理に関心を持つ)
齋藤の乃(ノルウェーでの留学をきっかけに、食と環境問題の関わりに関心を持つ)
ふんどしの魅力、ととのうパンツ®︎の始まり
伊藤:ととのうパンツ®︎のように快適な衣服へのこだわりは、どのようなきっかけから始まりましたか?
中川様:2011年に僕自身がうつ病と診断され、半年間ドクターストップがかかりました。その時期に知人から、肌への締め付けがないふんどしを下着として身に着けるとぐっすり眠れることを教えてもらい、始めてふんどしを穿いたのですが、その快適さに衝撃を受けました。実はゴムの跡が付くぐらいピタッとした下着を穿くと、脳は緊張状態になって睡眠の質が落ちるそうです。このようなきっかけから、就寝時のリラックスウェアとしてカラダとこころをゆるめるふんどし「sharefun®(しゃれふん)」を開発し、2011年にブランドとしてスタートしました。ふんどしの魅力をより多くの方に知ってもらうため、一般社団法人日本ふんどし協会会長としても活動を行っています。
sharefun®(しゃれふん)
※ソーシャルプロダクツ・アワード2022でソーシャルプロダクツ賞を受賞
伊藤:sharefun®(しゃれふん)のブランド展開を経て、ととのうパンツ®︎はどのように生まれたのでしょうか?
中川様: 僕はサウナが大好きなのですが、「ととのう」というサウナ用語があります。サウナ施設で周りを見渡してみると、サウナ後はボクサーパンツのように締め付けのある下着を穿いて帰る人がほとんどで、ととのって心身ともに良い状態になれたのにもったいないな、と感じたことがきっかけでした。
伊藤:中川様自身がお好きなサウナのシーンから着想を得たのですね!
中川様:はい。当初はこのような方々にふんどしを広めたいという思いを持って、「サ道」という漫画を書いたタナカカツキ先生へ相談しに行きました。先生からは、「ふんどしは良いけど身に着けるのはハードルが高いんじゃないかな?」とご意見をいただいて。そこで、圧迫感のないさっと穿けるショートパンツ、ととのうパンツ®︎の開発を始めました。
齋藤:ととのうパンツ®︎のターゲットはどのような方を設定されていますか?
中川様:明確に絞ってはいません。”僕が欲しい・こういう商品があったらいいな”と思ったものを作っているため、基本的には僕と同世代(40代半ばぐらい)で、仕事も子育ても忙しい、その中でもたまにサウナへ行ってオフの日を過ごす、といった層はイメージしています。
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顔の見える生産者とのものづくり
伊藤:ととのうパンツ®︎は日本製の生地(綿100%)を使い、日本国内の縫製工場で作っていますよね。その良さやこだわりを教えてください。
中川様:デリケートゾーンの肌に直接触れるものなので、化学繊維ではなく綿にこだわっています。また海外生産の場合、作り手が見えづらいこともあります。そのような中で、ととのうパンツ®︎やsharefun®(しゃれふん)のものづくりでは生産者の顔が見える安心感を大事にしています。誰が工場で縫製してくれて、出来上がった商品を包装してくれているのかなど、生産者のお名前が言える関係性の中でものづくりを続けたいと思っています。
伊藤:そのようなものづくりを大事にしたいと思ったきっかけはありますか?
中川様:ここ10年間の中で何回かふんどしブームがあったり、sharefun®(しゃれふん)にテレビ取材があり全国から沢山注文が入ったりと、ふんどしを手に取ってくださる人が増えふんどしを広めたい想いが報われた一方で、sharefun®(しゃれふん)に似てはいるものの品質がそこまで高くない商品を目にするようになりました。そのような状況下でも引き続きふんどしの良さを広めていくために、sharefun®(しゃれふん)はどのような部分で勝負すべきかを考えました。それがまさに、その商品を誰がどんな想いを込めて作っているのかを明確にすることでした。ととのうパンツ®︎も同様の姿勢で生産をしています。
縫製工場の様子
楽しさから伝える、ととのうパンツ®︎の魅力
齋藤:ととのうパンツ®︎のwebサイトに載っている「7つのNO」が印象的でした。生活者への伝え方はどのような工夫をしていますか?
中川様:7つのNOの内容は、コミュニケーションの最初にはあえて言わないようにしています。”正しいこと”よりも”楽しいこと”から伝えて商品を知ってもらいたいと思っているので、ととのうパンツ®︎は”ノーパンで穿ける”ことをメインに訴求しています。まずは”楽しいこと”から商品に興味を持って体験いただいた後に、実はこんなブランドストーリーや生産背景があると知っていただくことで、ととのうパンツ®︎が掲げる7つのNOの理解も深まり、ととのうパンツ®︎のファンになっていただける方が増えると思っています。
齋藤:生活者はSNSなどの口コミを意識することも多いと思いますが、工夫されていることはありますか?
中川様:サウナーでモデルの清水みさとさんやサウナが好きな方たちがととのうパンツ®︎を使ってくださり、その方々のSNSや口コミを通して広がっていっています。メディアで取り上げられると話題になりますが一瞬でブームが過ぎ去ってしまう傾向にあるため、口コミは大事だと思っています。また、ととのうパンツ®︎のInstagramはパンフレットの役割として写真を投稿していますが、「#実はノーパンです」といったハッシュタグの工夫を行っています。
ととのうパンツ®︎のInstagram投稿
齋藤:7つのNOに書かれていた、”売りっぱなしにしない”という言葉が目に留まりました。掲げられている古着の有効活用というのは、どのようなビジョンなのでしょうか?
中川様:ととのうパンツ®︎の使用期間目安は3年です。3年経過後でも使っていただくことはできますが、新しいものに買い変えたくなることもあると思います。使わなくなったととのうパンツ®︎が捨てられて終わりではなく、お客様から当社が回収し、洗浄した後にホテルや旅館などの館内着として使っていただける循環を作れればと思っています。
齋藤:生活者もサーキュラーエコノミーに参加できる仕組みですね!日常でより、生活者がソーシャルグッドな商品・サービスを選び使うようになるために、企業としてどのようなことができると思いますか?
中川様:商品・サービス自体の高いクオリティが土台にあるからこそ、ソーシャルな部分の良さが際立つと思っています。そのような中で、ソーシャルな取り組みが第三者から評価されたことをお客様にお伝えする手段として、ソーシャルプロダクツ・アワードのような表彰制度の受賞歴やマークを活用することで、ブランドへの信頼につながると思っています。
伊藤・齋藤:本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!