近年、オーガニックコットンを使ったベビーグッズは、大型のベビー用品専門店から輸入ベビー雑貨のセレクトショップに至るまで、実に多くのお店で販売されています。その背景には、敏感で繊細な赤ちゃんの肌に直接触れるタオルや衣類の品質にこだわる生活者が増えていることがあると思います。
今回は、ベビーだけでなく、環境にもやさしいオーガニックコットンのベビー服「Pureborn Organic」の輸入販売を手掛けるGREENMIND JAPANをご紹介します。代表の松本様にお話を伺いました。
代表の松本様
―ニュージーランドから日本への輸入販売を始めた経緯を教えてください。
「Pureborn Organic」は、ニュージーランド人のキャサリン・ホーキンスが、良質でリーズナブルなオーガニックコットンのベビー服を、多くの人に提供したいという思いから、2008年に立ち上げたブランドです。
この「pureborn organic」との出会いは2011年、ニュージーランド出身の妻が現地で出産することになり、現地で様々なベビー用品を見ていた時、「Pureborn Organic」の商品をお店で見かけたことがきっかけでした。それまでは、オーガニックコットン=生成り、そして価格も高いというイメージを持っていたのですが、「Pureborn Organic」は、愛らしい色使いのデザインで、その上リーズナブルな価格であることに驚きました。そして、実際に自分の子供に着せてみたところ、生地が柔らかく肌触りが良い上に、洗濯しても型崩れしないほど丈夫―この素晴らしい商品を日本で販売したい、と思い、キャサリン氏に直接交渉した末、日本の輸入総代理としての契約を結ぶことができました。
―「Pureborn Organic」商品の特徴を教えてください。
特徴は、社会性に関するものと商品性に関するものの大きく2つあります。まず前者ですが、「Pureborn Organic」で使用されている素材は、全てオーガニック・テキスタイルの世界基準であるGOTS認証*1を取得した工場で作られたオーガニックコットンです。通常、綿花栽培には多くの農薬や化学肥料が使われますが、「Pureborn Organic」は、農薬の類を全く使わずに栽培されたインド産の綿花のみを使用しています。オーガニックコットンの綿花を使用することで、農薬を大量に使う厳しい労働環境ではなく、生産者が安心して働ける環境作りにつながります。また、私たちがオーガニックコットンを広めることで、オーガニックコットンの生産量が増えれば、現地での雇用拡大にもつながります。ちなみに「Pureborn Organic」のベビー服は、紡績や縫製などの加工も全てインド国内の工場で行っています。
後者の商品性に関して言うと、「Pureborn Organic」の商品は、とても柔らかく肌触りが良い厚手の生地を使っていますが、生地に縮みや歪みの防止処理をしているので他のオーガニック製品でおこりやすい生地の縮みが起こりません。また、生地を染める染料やプリントは、肌にも環境にもやさしい草木染め等をしています。
*1 原料となる綿花の栽培から、製造を経て、ラベリングに至るまで、「当該製品が正しくオーガニックである」という状況を担保するもの。厳しい基準を満たした、環境にやさしく社会的に責任のある製造過程や製品のみが、GOTS認証を受けることができる。
―「Pureborn Organic」は、本国ニュージーランドで、どのようなブランドとして認知されているのでしょうか?
「Pureborn Organic」は、ニュージーランド全土で広く知られているブランドです。町の小さな個人経営のショップから大きなショッピングモールに至るまで、実に多くの店舗で販売されています。日本で、オーガニックコットンのベビー服というと、どこか特別で高価なイメージがあるように思いますが、ニュージーランドでは、オーガニックやリサイクルといった環境にやさしい商品がとても一般的で、人々の生活に広く浸透しています。「Pureborn Organic」も同様で、オーガニックコットンを使用した、手頃な価格のベビー服ブランドとして広く愛されています。キャサリン氏が自ら、インドの生産現場を頻繁に訪れ、自分の目で常に品質管理をし、商品開発や商品改良に日々努めているため、「Pureborn Organic」の商品は、品質に妥協がありません。こうしたことが、生活者からの信頼につながっており、その結果広く愛されるブランドになっているのだと思います。
創始者のキャサリン氏とご家族
―ニュージーランドや欧米諸国と比べた時の、日本におけるオーガニックベビー服市場の規模や拡大の可能性をどのように見られていますか。
私は、20年ほど前に、オーガニック専門の野菜や雑貨など売っている小さなお店でアルバイトをしていたことがあるのですが、当時はオーガニック商品を扱う店も少なく、取り扱う商品の種類や数もごく限られたものだけで、高価格なものが殆どでした。オーガニックという言葉さえも一般的ではなかった当時と比べると、今では多くのオーガニック商品が市場に出回り、手頃な価格帯のものも増え、ずいぶん身近になってきたという実感はあります。しかしながら、日本のオーガニックコットンの市場規模は欧米諸国と比べるとまだまだ小さいです。
ニュージーランドを例に出すと、人々の生活に必要な物の選択肢として、オーガニックやリサイクルと いった環境に配慮した物が多くあります。そもそも無駄な消費を好まないという国柄もあるのでしょうが、意識せずとも環境に配慮した商品を選ぶ人がとても多いです。オーガニックメリノウールも、ごく一般的な素材として広く使われています。ニュージーランドのように環境を大事にすることが当たり前に染みついている国のようには広がらないかもしれませんが、日本に合う方法で、オーガニックベビー服市場を拡大する余地は十分にあると思います。
―オーガニックコットンの社会性をお客様に伝えるために、どのようなコミュニケーションをしていますか?
商品のタグには、GOTSマークが入っているので、知っている人には「これはオーガニックコットンで作られた商品」ということは分かっていただけると思います。ただ、GOTSをはじめとしたオーガニックコットンの認証マークは、日本ではまだまだ認知度が低いというのが現状です。商品についているタグだけでコミュニケーションすることは難しいので、「Pureborn Organic」の理念や想い、オーガニックコットンの社会性をお客様へ伝えるべく、ポストカードサイズのパンフレットを作成して、お客様へお配りしています。
その一方で、お客様の多くは「オーガニックだから」という理由だけではなく、洗濯機で洗える素材の丈夫さや、ユニセックスでシンプルなデザインを気に入ってご購入下さっています。そうしたことを踏まえると、「Pureborn Organic」のベビー服を買うと、生産地域の人々や地球のHAPPY“にも”つながる、というくらいが丁度良いのではないかと思っています。
ちなみに、本国ニュージーランドでは、サイト上で、1%FOR THE PLANET*2への参加を表明していたり、GOTSマークを紹介したりして、「Pureborn Organic」の環境への配慮を発信しています。
*2 自然環境保護の必要性を理解する企業が加盟する組織。メンバーは年間売上の1%の寄付を通じて、草の根環境保護団体の活動を支援している。
―御社の今後の目標について教えてください。
ここ数年、日本国内では、商品の社会性に対する意識が確実に変わってきていると感じています。オーガニックコットンのベビー服に限らず、ソーシャルな商品の市場はまだまだ小さいですが、多くの生活者にオーガニックコットンや「Pureborn Organic」のベビー服の存在を知らせ、「商品選択を通じてより良い社会づくりに参加することができる」というメッセージを届けていきたいと思っています。
現在、社会性やストーリーのある商品のみを扱うオンラインのショッピングサイトでも販売させていただいているのですが、意識の高い方が能動的に集まる場所は、生活者と企業がコミュニケーションをできる場所として貴重な存在だと感じています。当社は自社のリアル店舗を持っていないため、基本的には小売店様に卸して販売していただいているのですが、直接お客様にストーリーをお伝えすることや、お客様からのご意見をいただくことはとても重要なことだと思っていますので、取り扱い小売店を増やすだけでなく、イベント等にも積極的に出店して、お客様と直接コミュニケーションできる場をもっともっと作っていきたいと思っています。