「生産者の想い」と「生活者の関心と絡めたエコ活動」が
フェアトレード、エコ、オーガニック商品の消費を促進?!
~第8回「生活者の社会的意識・行動に関する調査」結果を発表~
一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(略称:APSP、本社:東京都中央区、会長:江口泰広)は、株式会社SoooooS.カンパニー(本社:東京都中央区、代表取締役:木村有香)と合同で、2012年から継続して市場調査を実施してきました。
SDGsの理念が広がる中で、人や地球にやさしい商品「ソーシャルプロダクツ」が注目されています。第7回調査※では、「SDGsの達成につながる商品の認知度は約30%である一方、実際に購入までしている人は5%未満にとどまる」ことが明らかになりました。ソーシャルプロダクツの普及には、そうした意識と行動(購入)のギャップを解消することが求められます。
そこで第8回となる本調査では、なぜソーシャルプロダクツを購入するようになるのかを探るため、ソーシャルプロダクツ購入者56名にインタビューを実施しました。その内、ソーシャルプロダクツの代表的ジャンルである「フェアトレード商品」「エコ商品」「オーガニック商品」の購入者36名分のインタビュー記録を分析し、購入のキッカケや動機付けなどを明らかにしました。
※「第7回『生活者の社会的意識・行動に関する調査』結果を発表 SDGsを達成する商品の購入者は、 社会的取り組みに対する参加意欲が高い」
https://www.atpress.ne.jp/news/204171
【調査結果のポイント】
■フェアトレード商品(人に対する配慮が特徴)
「商品のストーリー(生産者の想いなど)が生活者と身の周りの人(家族、友人など)とでシェア」された時、フェアトレード商品の消費が促進されるようです。
例えばAさんは、フェアトレードのバッグをご主人にプレゼントし、リーフレットを通して発展途上国の様子をシェアすることで、喜んでもらえたと語っていました。
リーフレットやWebコンテンツなどで、支援内容が魅力的に分かりやすく表現され、生活者が商品のストーリーを身の周りの人に伝えやすくなる工夫が重要であることが分かりました。
■エコ商品(地球に対する配慮が特徴)
「環境問題に対する生活者の個人的な関心やメリット(動物好きな人が自然保護基金に寄付できる、河川にも手肌にもやさしい成分など)と、企業の取り組みが重なった」時、エコ商品の消費が促進されるようです。
例えばCさんは、商品を通した環境保護活動(サンゴ保全)について、好きな芸能人が出演するCMで知りました。
単に環境問題に警鐘を鳴らすだけではなく、生活者の個人的関心やメリットに絡めたプロモーションの設計が求められます。
■オーガニック商品(人や地球に対する配慮が特徴)
無農薬であることが生産者や生態系にやさしいというオーガニック商品の特徴を、好き/嫌いになった点として挙げている発言は見られませんでした。このことから、「オーガニック商品の人や地球に対する配慮が十分に伝わっていない」可能性が考えられます。
例えばEさんは、エコ意識が高く、買い物時にプラスチック容器や袋などは受け取りません。しかし、購入しているオーガニック商品の「地球への配慮」については言及がなく、「身体へのやさしさ」を好きになったり、「高い値段」が嫌いになったりしているようでした。
オーガニック商品の「人や地球に対する配慮」をもっとアピールすることで、生活者からの値段に対する理解や、さらなる支持の獲得につながる可能性があります。
■まとめ
ソーシャルプロダクツの特徴である「人や地球に対する配慮」は、適切なポイント(「生産者の想いを共有する工夫」と「生活者の関心と絡めたエコ活動の訴求」)をふまえることで、SDGs達成につながる消費を促進し、生活者からの支持につながり得ることが明らかになりました。
ソーシャルプロダクツのジャンルや対象とする生活者の特性を踏まえたソーシャルプロダクツ開発、プロモーション企画にご興味・関心がある方は、お気軽に幣協会までご相談ください。
【ソーシャルプロダクツ:フェアトレード商品/エコ商品/オーガニック商品とは】
ソーシャルプロダクツとは、何らかの社会的課題の解決に貢献する商品・サービスを指します。東京オリンピック・パラリンピックの食材・資材調達基準などでも話題になっているフェアトレードやエコ(環境配慮)、オーガニックといった人や地球、地域社会に配慮があり、SDGs(持続可能な開発目標)の達成につながる商品・サービスの総称です。
フェアトレード商品とは、発展途上国の生産者から適正な価格・条件で購入した商品などで、そうした人たちの自立や貧困解消につながるものを指します。
エコ(環境配慮)商品とは、エネルギー消費が少なかったり、リサイクルした材料を使ったりした商品などで、環境への負荷が既存の同様の商品と比べて明らかに低減されているものを指します。
オーガニック商品とは、農薬や化学肥料、添加物などを使用せずに栽培・加工された商品などで、環境や生産者への負荷が小さいだけでなく、安心して使えるものを指します。
※ソーシャルプロダクツの定義:http://www.apsp.or.jp/socialproducts/
【インタビュー概要】
<対象>
直近3か月以内で「人や地球にやさしい商品(フェアトレード、エコ、オーガニックなど)」の購入経験がある10~60代の男女。
<主要質問項目>
・その商品を購入したキッカケを教えてください。
・購入した商品の好きになったところと、嫌いになったところを、それぞれ教えてください。
・購入後に、商品の「人や地球に対する配慮」について、誰かに伝えたり、SNSで発信したりしましたか?
・あなたが日頃の買い物/商品選びの際に重視する点を教えてください。
【調査結果】
(1)フェアトレード商品は、支援内容が魅力的で分かりやすく表現され、生活者が身の周りの人に伝えたくなるような工夫がある場合に、消費が促進される
日頃の買い物/商品選びでは、「生活者にとってのメリット(品質が良い、手頃な価格、安心・安全など)」しか重視しないにも関わらず、購入したフェアトレード商品の「人に対する配慮」を好き/嫌いになった生活者に注目します。そうした人が、「人に対する配慮」を好き/嫌いになった点を分析することで、フェアトレード商品の消費を促進する要因を探りましょう。
Aさんは、フェアトレードの生産者を支援できる仕組みに共感し、好きになった点として挙げています。フェアトレードのバッグを購入し、旦那さんにプレゼントしたということでした。その際、支援内容について書かれたリーフレットを一緒に渡したところ、旦那さんが興味を持ち、すごく喜んでくれたそうです。
Aさんの発言から、フェアトレード商品の消費を促進する上では、以下の2点がポイントであると言えます。1点目は、支援内容(人に対する配慮)を魅力的に分かりやすく表現(店頭での商品説明、POPなど)することです。2点目は、その支援内容を生活者が身の周りの人に伝えやすくなる工夫(リーフレット、Webページへ誘導するQRコードなど)を施すことです。
(2)エコ商品は、環境問題に対する生活者の個人的な関心やメリット(動物好きな人が自然保護基金に寄付できる、河川にも手肌にもやさしい成分など)と、企業の取り組みが重なった場合に、消費が促進される
日頃の買い物/商品選びでは、「生活者にとってのメリット(品質が良い、手頃な価格、安心・安全など)」しか重視しないにも関わらず、購入したエコ商品の「地球に対する配慮」を好き/嫌いになった生活者に注目します。そうした人が、「地球に対する配慮」を好き/嫌いになった点を分析することで、エコ商品の消費を促進する要因を探りましょう。
Bさんはエコ洗剤の手肌にやさしいだけでなく、河川にもやさしい点が好きになったようです。そのことを友人にも伝えたところ、手肌へのやさしさだけでなく、環境問題にも取り組んでいることに驚いてもらえました。
Cさんは、好きな芸能人が出演していたCMをキッカケに、売上の一部をサンゴ保全活動に寄付しているコスメを購入しました。幼いころから動物が好きで絶滅危惧種の生態やその原因に関心があったため、保全活動を知って以降は、継続してその商品を購入しています。
これらの発言を踏まえると、エコ商品の消費を促進するためには、生活者にとっての個人的関心(趣味、ライフスタイルなど)やメリットと結びつけて「地球に対する配慮」をアピールすることが重要と言えます。
(3)オーガニック商品の生産者や生態系に対する配慮が生活者により伝わることで、値段に対する理解や、さらなる支持獲得につながり得る
日頃の買い物/商品選びでは、「人や地球に対する配慮」を重視しているにも関わらず、購入したオーガニック商品の「生活者にとってのメリット」のみを好き/嫌いになった人に注目します。そうした人が、「生活者にとってのメリット」を好き/嫌いになった点を分析することで、オーガニック商品の消費を促進する要因を探りましょう。
Dさんは、フェアトレードであるかなど、生産地や生産方法に関する配慮をかなり重視する人です。しかし、購入したオーガニックコスメの好き/嫌いになった点として、「人に対する配慮」は言及していません。
Eさんは、プラスチック容器やレジ袋、割り箸はもらわないことを徹底しており、無農薬栽培が地球環境を守ることにつながると認識している人です。しかし、購入したオーガニックコスメの好きになった点としては身体へのやさしさといった「生活者にとってのメリット」のみを挙げています。
これらの発言から、日頃の買い物/商品選びで「人や地球に対する配慮」を重視している生活者であっても、オーガニック商品は肌への優しさや価格といった「生活者にとってのメリット」のみを好き/嫌いの基準としており、「オーガニック商品の人や地球に対する配慮が十分に伝わっていない」可能性が考えられます。また、2人とも価格の高さを嫌いになった点として挙げていますが、「人や地球に対する配慮」をより積極的にアピールすることで、値段に対する理解を得られ、生活者からのさらなる支持につながるかもしれません。
【ソーシャルプロダクツのマーケティングにおける示唆】
フェアトレード商品はギフトとの相性が良いようです。それは、「贈る人(購入者)の想い」と「贈る相手への想い」に加えて、発展途上国でその商品を作っている「生産者の想い」、さらにはそうした「生産者への想い」、この4つの想いをギフトを贈る人・贈られる人の間で共有できるからです。
だからこそ、「想い」を共有するパンフレットやWebコンテンツなどの仕掛け(ツール)は必須です。それが不十分(情報が不十分だったり、店員からの口頭説明だけだったり)だと伝わらないばかりか、支援内容が不透明という不満につながることさえあります。また商品に対する過剰なパッケージなど、「想いを伝える文脈」から逸脱している仕掛けには、購入者が不満を持ったり、選ばれない可能性さえあります。
エコ商品の購入のキッカケは、「母親が使っていた」「絶滅危惧種に関心があった」「好きなタレントのCMを見て」など、生活者にとって身近なことが多く見られました。
環境問題は誰もが知っている社会的課題ですが、日常生活では身近に感じにくいもので、「自分ごと化」が意外に難しいのかもしれません。ゆえに、環境問題に対する取り組みと生活者の個人的関心やメリットを結びつけたプロモーション(「河川にやさしい=手肌にもやさしい」「海や山を汚さない=アウトドアを楽しめる」)が重要と言えます。逆に言えば、単に生い茂った森や氷に取り残されたシロクマの写真など、よく見かける広告やパッケージだけでは、生活者の環境問題に対する意識は喚起できても、エコ商品の購入行動につなげるのは難しいのです。
オーガニック商品は、日頃「人や地球に対する配慮」をとても重視する生活者であっても、購入したオーガニック商品の健康性やデザイン、値段などの商品性に関わる側面しか好き/嫌いになった点として挙げられていませんでした。
オーガニック商品は無農薬であることが、①生産者のこだわり・生産者の健康被害削減、②生態系への悪影響緩和という特徴があります。インタビューからは、①も②も十分にコミュニケーションできていない可能性が示唆されました。①に関してはフェアトレード商品と同様に想いを共有する仕掛け(ツール)を設計すること、②に関してはエコ商品と同様に生活者の個人的関心やメリットと結びつけることで、さらなるオーガニック市場の活性化が見込めます。
このように、人や地球にやさしいソーシャルプロダクツといっても、そのジャンルによって購入のキッカケや購入する生活者の特性もまったく違うことが分かりました。
そしてなにより、「人や地球に対する配慮」を適切にコミュニケーションすることで、商品の売上増大や生活者からのさらなる支持に寄与することが明らかになりました。
【調査と分析の概要】
調査タイトル:第8回「生活者の社会的意識・行動に関する調査」
調査実施者:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会/株式会社SoooooS.カンパニー
調査実施日:2019年7月22、31日/8月5、7、10、11、21、24、25、26、28日
調査方法:オンラインチャットによるインタビュー(チャットインタビューサービス「Sprint」にて実施)
インタビュー対象:国内在住のソーシャルプロダクツを購入したことがある10代~60代の男女56人
分析対象:インタビュー対象56人の内、オーガニック、エコ、フェアトレード商品の購入者36人
分析方法:グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)
※インタビュー/分析の方法などは、こちらをご参照ください(調査詳細PDFファイル)。
本調査に関するご質問、専門家による詳しい分析結果などにご興味・関心がある方は当協会へご連絡ください。
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■参考:過去の「生活者の社会的意識・行動に関する調査」結果は、下記URLをご参照ください。
2012年: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000004647.html
2013年: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000004647.html , https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000004647.html
2014年: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000004647.html
2015年: https://www.atpress.ne.jp/news/63217
2016年: https://www.atpress.ne.jp/news/100738
2017年: https://www.atpress.ne.jp/news/128586
2019年: https://www.atpress.ne.jp/news/204171
【本件に関するお問い合わせ先】
一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 研究員:樋口・石原 Tel:03-3248-5755 Mail:info※apsp.or.jp (※を@に変えてください。)
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