株式会社スルシィ(東京都品川区)は2011年創業、ラフィアバッグの製造と販売を行っています。バッグにはフィリピン産天然素材100%のラフィアを使用し、現地の編み手が1点ずつかぎ針で編むフェアトレード商品です。事業を構想し、バッグデザイン・技術指導・国内外での販売促進を手掛ける、代表の関谷里美さんにお話を伺いました。
―大変お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。この事業を行うことになった経緯から教えてください。
25年間青山で営業してきた輸入雑貨店を閉めることになり、その後、セブ島旅行に行きました。友人のためのお土産を探していて、かごバスケットが3つで1000円程度で売られているのを見つけました。普段なら「安くてラッキー」と思うところですが、そのときなぜか「作り手は工賃としていくらもらえるのだろう」と心に懸かりました。帰国後も気になり続け、現地のNPOなどを検索して、10件ほど「編み手を集めてもらえませんか?私が技術指導して商品を作り、日本で販売します。」といった内容の英文の手紙を書きました。しかし返事はゼロでした。
それでもあきらめられず、今度は大使館やジェトロに問い合わせてパートナー探しを継続。最終的にフェアトレード事業をしているフィリピンの方とコンタクトがとれて現地に飛び、女性たちと出会うことができました。2010年のことです。
―女性たちは編物経験があったのですか?
全くやったことがない人ばかりでした。彼女たちに編み方を教え、2~3か月後に再訪して出来上がりをチェックしてまた指導する、ということを繰り返しました。最初は理解してもらえず、上達も進まなかったので、「このまま3年も4年もかかったらどうしよう」と不安になるほどでしたが、「いいものを作ればお金になる」ということを体験してもらえてから軌道に乗り、商品化できると判断して2011年11月に会社を設立しました。
―商品が準備でき、次は販路開拓ですがいかがでしたか?
夏の季節商品なので、1年目は翌年の2012年夏にいくつかの場所で販売し手ごたえを感じましたが、実績はあまり出ませんでした。しかし次の2013年の夏シーズンには日本橋三越さんなど百貨店で取り扱っていただけるようになりました。
―2年目から継続的に百貨店とも取引されていて、事業は順調ですね。要因として「フェアトレード」への共感もあると思いますが、やはりデザイン性に優れた商品の魅力が大きいですね。なぜ広く受け入れられたのでしょうか。
スキマビジネスだったと思います。ありそうでなかったという。ラフィアバッグは3万円以上する高級ブランド品と数千円の大量生産品とに二極化していますが、スルシィのバッグはそのちょうど中間の品質と価格です。お気に入りのラフィアバッグが欲しいと思って探したことがある人なら安く感じるのではないでしょうか。
-手作りならではのバリエーションの豊富さも魅力ですね。大きさやデザインが多彩で、自分好みのバッグを探すことを楽しめそうです。編み手の女性たちはどんなふうに仕事をしていますか。
現在、約50人が働いています。家事・農作業・子育てなどの合間に1日5時間程度働いて、月収で1万円位になります。工房があるセブ島では子守や食堂で長時間毎日働いても月4000円ほどで、そういう職場さえ数少ないです。
分業はしておらず、編み手は1人でバッグ1つの全ての工程を担当します。工賃はバッグごとに決まっています。バッグに付けたタグには編み手のサインを入れ、半分はハガキになっていて、購入した方がスルシィ宛にお手紙を出していただけるようになっています。
固い繊維を細かい目で編んでいく作業は、通常の編物よりも技術も力も必要で決して楽ではありませんが、がんばってスキルアップに励んでいる編み手さんたちが、見た目の清涼感や風合いに加えて、「軽くて丈夫」という魅力をもったラフィアバッグのクオリティを維持してくれています。
-依頼を受けて刑務所内で生産指導始めるなど、地域に根差した取り組みが広がっていますね。
工房のあるカルカル市の刑務所に収監されている女性たちの多くは
-今後の展開を教えて下さい。
もっと編み子さんを増やして、
また、編み子さんにもっと自信を付けてもらうという意味で、
-新商品が大変楽しみです。今日はありがとうございました。
公式サイト:株式会社スルシィ https://www.sulci.co.jp/
(当記事は2017年5月に発行された当協会ニュースレターにて紹介したものを、2020年11月現在の情報に改めた記事となっております。)