5月は世界フェアトレード月間です。それに伴い、世界各地でフェアトレードに関するイベントが催されます。当記事では、フェアトレードに積極的に取り組む企業をご紹介します。「商品を通じて世界の伝統文化をお客様へ伝えたい」「国・世代・ジャンルを超えて取引先各国の人たちと一緒に切磋琢磨、共存共栄していきたい」というビジョンを掲げる株式会社チチカカ(以下、チチカカ)は、衣料品や雑貨の製造から販売までを幅広く手がけています。チチカカのフェアトレード製品に関する取り組みについて、経営企画室の亀田様、商品部の松尾様、CSR担当の髙橋様にお話を伺いました。
左から順に亀田様、松尾様、髙橋様。
写真の商品(右)現在発売中のフェアトレード認証コットンバッグ、(中央)申請・発売予定の新作バッグ・ポーチ、(左)クッションカバー
―御社は「世界の伝統文化をお客様に伝えること」を使命とされ、その伝統文化とお客様のニーズを融合させた「チチカカらしい」商品を製造・販売されているということですが、商品の特徴を教えていただけますか?
チチカカの商品は、中南米のカラフルで明るいデザインの物が中心です。世界各地の民族が長く受け継いできた刺繍を基に、デザイナーが刺繍の場所や色などをアレンジし、日本のお客様にも受け入れられるような服や雑貨のデザインを作ります。そうすることで、民族の伝統文化を継承しつつ、日本のお客様にも受け入れて頂ける「チチカカらしい」商品が生まれます。
―なるほど、伝統文化を取り入れながらも日本のお客様に受け入れてもらえるデザインを心がけた商品作りをされているのですね。商品作りにおいて、気をつけていることや苦労されていることはありますか?
商品の品質には厳しい基準を設けています。「生産者の支援になる商品だから」とか「フェアトレード商品だから」などの理由に甘えて品質に多少でも妥協すれば、お客様の期待を裏切ることになり、次の購入にも結びつきません。デザインも品質も良く、手頃な価格の商品は、購入が継続・拡大し、発注量が増え、生産者の雇用や伝統文化の継承にも繋がります。
品質を担保する商品を作ることは、困難なことも多くありますが、チチカカでは現地の生産者のもとにできるだけ足を運んで信頼関係を構築し、生産者の方々とのコミュニケーションの機会を設け、理解や協力を得られるように努力を続けています。
―現地の生産者との信頼関係の構築にあたって、御社ならではの取り組みなどはありますか?
チチカカの商品のうち、「ハッピートレードコレクション」という商品ラインには売上の5%が生産者へ還元される仕組みがあります。弊社では、このお金をそのまま現地に寄付するのではなく、有効な活用方法を現地の人々と一緒に考える仕組みをつくっています。
過去の例として、ペルーのタキーレ島では、現地の人と話し合った上で拡声器や計算機の購入、観光客向けの有料トイレの設置などを行いました。
現地の生産者との交流の様子
―実際に拝見した商品は、カラフルで明るいデザインの商品が多く見受けられましたが、チチカカの顧客層についてお伺いできますか?
お客様は約9割が女性で、20~30代の女性が殆どです。取扱商品も、その年代の女性をターゲットとして意識しています。ファッションを楽しむ若い女性は、流行にも敏感で情報発信力もあるので、チチカカを知っていただき、広めていただきたいと思っています。
実際、2012年12月に発売した「フェアトレード認証コットンバッグ」は、学生さんや若い女性にとても人気で、生産が追いつかないほどの売れ行きとなっています。コットンバッグ全体に刺繍が施された明るいデザイン、また1995円という価格設定も好評を頂いている理由だと思います。
フェアトレード認証コットンバッグ(全6種で展開)
―お客様は「フェアトレード認証」のことをどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか? また、御社としてはどのように捉えてほしいと思われていますか?
このバッグは、日本では初のフェアトレード認証コットンバッグですが、「フェアトレード認証」ということを意識して購入されているお客様は全体の 2~3 割程度だと感じています。チチカカとしても、フェアトレード認証であるという情報発信は、店内のPOP以外では、バッグに特製のタグをつけている程度です。デザインが可愛い、コットンの質感がいい、などの理由で商品を購入されたお客様が、そのタグを見て初めてフェアトレード認証商品だということを知る、というくらいが理想です。そこでフェアトレードや認証商品について知ってもらい、今後の普及に繋がればと考えています。
―御社は、毎年売上を伸ばしていらっしゃいますね。生産者の方々の支援に結びつくような製品を取り扱う業種の中では珍しいのではないかと思うのですが、その秘訣を教えていただけますか?
確固たる経営理念のもと、社員をはじめ、チチカカに携わる全ての人々が同じ目標を持って業務に邁進していることが数字に繋がっているのだと思います。会社としても、スタッフが同じ目標に向かって一丸となれるような制度を用意しており、その代表的なものが社員の「かけはし制度」です。これは、エリアマネージャーや本社のリーダーを対象にした、生産現場を訪れる海外出張制度です。この制度は、生産地へ赴いた社員に、現地の生産者と交流し、商品が生まれる現場を肌で感じてもらうことで、お客様やスタッフと世界をつなぐ「かけはし」になってほしいという想いから生まれました。多くの社員が、この「かけはし制度」で「かけはし」になることをひとつの目標として、日々がんばっています。
―最後に今後の目標をお聞かせ下さい。
今後はライフスタイル提案型ショップとして、ファッションはもとより、雑貨や家具・ファブリック等の生活に必要な物を幅広く手がけていきたいと思っています。具体的には 2015 年までに 150 店舗、100 億円の売上を目指しています。この数字を実現していくことで、より多くのお客様に商品を通じて世界の文化をお伝えすることが可能になり、世界の各地域の文化の継承と雇用の促進にも繋がると考えています。取引先の国の人々と切磋琢磨・共存共栄しながら、持続可能な社会を目指し、チチカカはこれからも様々なことに取り組んでいきたいと思います。
※2013年3月現在10 店舗、売上58億円