【All for mom. For all mom. 私達が創るプロダクトはすべてお母さんへ贈る感謝のカタチ。そして、私達は国や文化、環境を越えてすべてのお母さんを幸せにしていきます。】をミッションとするTrim 株式会社。授乳室やおむつ交換台の設置を検索できるアプリ「Baby map」の運営と個室型授乳室「mamaro(ママロ)」を開発・運営するTrim 株式会社の代表取締役の長谷川裕介様に「mamaro」開発の経緯やビジネスモデル、今後の展望などのお話しを伺いました。
―「mamaro」の特徴を教えてください。
どこでも手軽に設置できる幅180cm、奥行き90cm、高さ200cm の完全個室ベビーケアルームです。授乳だけにお使いいただくのではなく、離乳食、おむつ替え、泣くのをあやすなどといったベビーケアに利用できます。内鍵で施錠できる完全個室なプライベート空間なので、従来の授乳室には入れなかったお父さんが利用することも可能です。中の照明は発熱しないLED 仕様かつソフトな素材なので、赤ちゃんが触っても安心です。シックハウス対策の部材を使用しているなど、ご利用いただくお母さん・お父さんに配慮した空間になっています。「Baby map」という授乳室やおむつ交換台の場所を検索できるアプリにも連動しており、空き状況が確認できるようになっています。「mamaro」は、現在、駅、商業施設、道の駅、自治体施設などに設置されています。畳一枚ほどのスペースとコンセントがあれば設置できるので、デッドスペースや空きスペースの有効活用に最適です。「mamaro」そのものがIoT となっており、利用状況や不正利用を感知できるセンサーを内蔵しているほか、デジタルサイネージ機能により施設側で広告やアンケートなどを配信することもできます。
―「mamaro」開発の経緯を教えてください。
私が28 歳の時、母を癌で亡くしました。十分な親孝行をできなかった分、子育てで困っているお母さん達を助けることで、母への恩返しをしたいと考えました。そこで広告代理店から医療系ベンチャー企業に転職し、「ベビ★マ」(Baby map の前身)を開発し、運営をスタートしました。しかしながら、そのベンチャー企業の経営方針で「ベビ★マ」事業への投資ストップが決まりました。この事業をなくすわけにはいかないと、事業そのものを買い取って起業しました。「Baby map」を運営していくなかで、出生数に対して授乳室の数が圧倒的に少ないこと知りました。一方で、従来の授乳室を一から作るのには膨大な費用がかかること、費用対効果も見えにくく簡単には設備投資することができない施設側の事情もわかってきました。また、従来の授乳室は、ただカーテンで仕切られているだけ、施設にたったひとつしかない、女性トイレ内にある、男性が入れないなど、子育てをする親や赤ちゃんにとって快適ではありません。それらを解決するために、自分達で作ってしまおうと、手軽に設置できる「mamaro」を開発する決断をしました。
―開発過程で特に苦労したことなどがあれば、教えてください。
ソフトウェア開発は経験がありましたが、ハード面のモノづくりについては知識も経験もなく、何をしたらよいかわからず、ラフスケッチから始めました。最終的には専門業者や大工にアドバイスをもらいながら設計しました。利用者であるお母さんが快適に過ごせて、施設者側からは通行障害にならない、適正サイズのバランス調整にとても苦労しました。出入口をスライドドアにするなど、通行者の安全にも配慮しました。また、建築基準法・消防法に適合するように天井に格子状のルーバーを採用していますが、斜め上から覗いても内部が見えないようにルーバーの厚みを決めるのはとても大変でした。―どのようなビジネスモデルでしょうか。お母さん達は「mamaro」を無料で利用できます。お母さん向けのサービスは、基本的に利用者から料金を徴収するモデルが多いですが、私達はすべてのお母さんに供給したいという思いで、利用料を無料にしています。収入源は「mamaro」本体の販売とシステム利用料です。さらに、中のモニターでの広告配信や、外側の広告スペースからも収益をあげています。売上と利益を安定させるために、二重の収益構造となっています。
―最後に、今後の課題・展望を教えてください。
当面「mamaro」の普及に注力します。これまで、約80 台の設置実績がありますが、今この瞬間にも子供は生まれてきているので、できるだけ多くの場所に置きたいと思っています。特に、お出かけと親和性が高いので、鉄道や道の駅のような生活に直結した施設により多く採用してもらいたいです。2020 年以降は、子育て相談や緊急時の医療相談、医師監修のAI 相談など、多様な利用ができるように開発をしていきたいです。また、使い方のユニバーサル化も検討しています。例えば、ドメスティックバイオレンスや虐待の相談窓口として利用する使い方です。すでにデバイスを介したチャットツールで相談できる仕組みはありますが、相談者自身のデバイスを介さない相談システムを「mamaro」内に確立することで、二次被害を恐れることなく安心して相談できるのではないかと考えています。「mamaro」が育児課題だけでなく、社会課題を解決し暮らしやすい世の中を実現する「インフラ」としての事業展開を進めていきたいと思います。
―ありがとうございました。
【参考資料】
Trim 株式会社 (https://www.trim-inc.com/)
mamaro (https://www.trim-inc.com/mamaro)