ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD. ―

2019/10/15

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD. ―

業界業種の垣根を越えた協業で、一人を起点に社会課題を解決し、新たな価値を創造することに挑戦するファッションレーベル「UNITED CREATIONS 041 withUNITED ARROWS LTD.」。

このレーベルを立ち上げた経緯や利用者の反応、今後の展望などのお話を株式会社ユナイテッドアローズ(UA LTD.)の玉井様とSocial WEnnovators(ソーシャルウィノベーターズ)の浅井様に伺いました。

― 「UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.」とは?また、その立ち上げの経緯を教えてください。

“WE”の力で社会課題と向き合っていく企業横断ユニット「Social WEnnovators」とUA LTD.が協業で「UNITEDCREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.」を立ち上げました。Social WEnnovators は、株式会社電通、日本テレビ放送網株式会社、一般財団法人ジャパンギビングに所属する社会起業家たちが会社の枠を超えて社会課題の解決にチャレンジするチームです。

このチームはすでに様々な活動をしていますが、その中のひとつが「041(オーフォアワン)」プロジェクトです。「041」はALL FOR ONE を意味するプロジェクトで、「あなた一人」を起点にプロダクト/サービス開発をする、B toB でもB to C でもないB to 1 型のアプローチを取っています。一人の課題を本質的に解決することで結果みんなの課題を解決するプロジェクトです。

これまでにスポーツ分野における”041SPORTS”やレスキュー分野における “041SOS”の実績もあり、今回はファッション分野において、「UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.」という新レーベルをUALTD.と一緒に立ち上げました。

障がいや病気をもつ方から服に対しての悩みを詳しくヒアリングして、その悩みを解決するための新しい服作りに挑戦しました。目指したのは、一人の悩みを解決し、かつ、すべての人が「おしゃれ」「着たい」「穿きたい」と思える服の開発です。その服作りには、インクルーシブデザインの考え方を取り入れました。インクルーシブデザインとは、障がい者、高齢者など、従来のデザインプロセスから除外されてきた多様な人々を、積極的に巻き込んで、課題の気づきからアイデアを形にしてデザインを導く手法です。その開発に携わっていただくメンバー、041 の「1(ワン)」の選出には、一般社団法人 障害攻略課にサポートしていただきました。

― 商品完成までの過程で特に苦労したことなどがあれば教えてください。

インクルーシブデザインの手法は素晴らしいと思いましたが、実際、形にしていくチャレンジは、思った以上に難しかったです。例えば、後ろが外せる2way コートでは、最初のプロトタイプを、開発に携わっていただいた車いすユーザーの「1」の方に雨の日に使ってもらったところ、車輪を漕ぐ腰のあたりの布が余ってしまい、そこに水が溜まって使えないことがわかりました。デザイナーは、企画段階で車いすを借り、乗って確かめながら作ったのですが、実際に「1」の方に着用して動いてもらうと想定と違うことが発生し、何度も試作を繰り返しました。途中でほんとうに形になるのか、途方にくれたこともありましたが、「1」の方をはじめ、型紙をつくるパタンナーなどもアイデアを持ち寄って、やっと形にすることできました。

―これまでにどのような商品を開発してきたのでしょうか。

●後ろが外せる2way コート

ミリタリースタイルの晴雨兼用コートで、通常は全身を覆うタイプです。しかし、背中側の下半分の生地を取り外せるので、車いすに座った時に前の部分だけ覆うようにできています。背中が開いて車椅子の背もたれを覆うことで、背もたれの部分が雨に濡れないようになっています。また、ウエスト部分をしぼることで、車いすを手で漕ぐ際に邪魔にならないような仕様になっています。さらに、背中とフードの後部には反射テープを付け安全面にも配慮しています。

●フレアにもタイトにもなるZIP スカート

実は、今日私が穿いているのがZIP スカートで、このプロジェクトの象徴的な商品です。介助者の視点から見ると、スカートは中心がわかり辛く、穿かせにくいアイテムです。また、開発に携わっていただいた「1」の方は、軽いフレアスカートは風でふわっとめくれたら自分で直すことができず、おしりのちょっとした縫い代の厚みが床ずれの原因になりやすいため、利用しにくいアイテムでした。それをおしりの縫い目をなくすこととZIP で解決しました。すべて閉じた5 本のZIP の真ん中を中心として着用し、着用後にZIP を開いてフレアにします。生地の重みとZIP の重みを計算して、風でめくれにくくしています。5 本あるZIP を自由に上げ下げすることでスカートの表情を変えられるのが、この洋服の面白さです。健常者にとっても、すべてのZIP を開けてふわっとさせてカジュアルに見せたり、すべてのZIP を閉めてフォーマルな感じを出したりと、ユニークなデザインです。私が普段このスカートを穿いていると「このスカートどうなっているの?」と声をかけられることもよくあります。その時に、この取り組みのことをお話すると感心されたり共感されたりします。

●フルオープンになる3ZIP パンツ

ウエストから左右に2 本のZIP をつけており、車いすに座ったままでも脱ぎ穿きしやすいように、ZIP が大きく開く仕様にしました。また、太ももに隠しポケットを付けて、ちょっとした小物を入れられるように工夫しました。裾やおしりの部分にもこだわり、裾の前部分を少し長めにして、座った時に裾がきれいに見えるようにしました。おしりの部分は着座スタイルを前提にあえてポケットをなくし、縫い目をなくしました。車いすユーザーの方にとっては機能的でファッショナブルに、健常者にとってはスポーツテイストのデザインです。

●スタイにもなるエプロンドレス

先天性筋ジストロフィーを持つ小学生の女の子とそのお母さんと開発した商品です。全身の筋力が弱く、よだれがたれやすいため、スタイ(よだれかけ)は、よだれや水分を拭くために外出時も持ち歩かなければならない必需品です。ところが、いわゆるよだれかけはベビー用しかありません。小学生といったらもうお姉さんですから、ベビー用のよだれかけをしていることに違和感があったそうです。「スタイ」に見えない「スタイ」が欲しい、という依頼がありました。そこでデザイナーが発想を転換して、エプロンワンピース型の洋服に「スタイ」機能を持たせました。吸水性・速乾性の高い生地を使い、口を拭く時にめくっても中に着た服が丸見えにならないように、生地は二重にしました。なおかつファッションとしても楽しめる洋服のスタイルにこだわりました。

―販路について教えてください。

第1弾は2018 年4 月に041 プロジェクトのクラウドファンディング型EC サイトで一定数受注が入った分を販売しました。第2弾は2019 年2 月からUA LTD.の自社オンラインストアで販売しています。いまのところ店頭販売はしていません。

 

―利用者の反応を教えてください。

まず、ZIP スカートの赤色にすごく驚かれていました。開発に参加してくださった車いすユーザーの方は、今まで挑戦したことのないカラーだったそうですが、実際着用してみるととても気に入り、「新しい自分を見つけた」「他の色にも挑戦してみたい」とおっしゃってくださいました。UA LTD.は、洋服を通してお客様の生活を豊かにしたい、幸せになっていただきたいと思っていますが、このプロジェクトも同じことで、本当にやってよかったと思いました。

また、同様の悩みを抱えている方やそのご家族から「待ってました!」という反応があったり、おしゃれをしたかったけどなかなか気に入るアイテムがなく困っていたという声などがあがったりしました。考えていた以上にこのような商品にはニーズがあることがわかりました。具体的には、エプロンドレスの、男の子用やもっと大きいサイズも作って欲しいという要望がありました。一人のニーズに応えて形にしたことで、他の人にもニーズがあるということがわかりました。皆様から今後の指針となるご意見を多くいただけました。

 

―業界内の反応を教えてください。

業界紙・ファッション系媒体に、このプロジェクトを取り上げていただきました。また、「NewsPicks(ニューズピックス)」でも取り上げられて、第一弾の記事へのコメントがファッション系や福祉系の人を中心に890 件もありました。ネガティブなコメントは一切なく、応援や協業を望むポジティブな評価ばかりでした。商品開発に携わったメンバーの同業他社の知り合いからも良い反応がありました。社内の声も同様で、立ち上げ当初に参画できなかったメンバーやこのプロジェクトに新たに興味をもってくれたメンバーから声をかけられるなど、良い影響があったことを実感しました。

―このプロジェクトの体制とこのプロジェクトを進めてきて感じたことを教えてください。

「041」のメンバー8 名、UA LTD.16 名、全員通常業務は別にあり、兼業で行いました。感じたことは・・・

(UA LTD. 玉井様 写真右)

一回きりの取り組みではなく、第3 弾・第4 弾と今後も続けていき、サステナブルな仕組みを目指すことを目標としています。現在は、プロジェクトと通常業務との兼業で、有志のメンバーが集まって新しい挑戦として楽しみながら向き合っています。上司やチームの周囲の協力や理解があるからこそ続けていけています。

(Social WEnnovators 浅井様 写真左)

このプロジェクトは普段の業務とは全く異なる領域の仕事でした。もともとファッションに関心が高く、服を通じて社会を変えていくプロジェクトに挑戦したいと思っていましたが、当初は社内で理解を得るのが難しかったです。しかしメディアで取り上げられるようになると、この新しい取り組みについて社内でも興味を持つ人が現れ、声をかけられるようになりました。個人としても新しいビジネス・事業を考える経験・知識を得られたことと、社会課題をファッションで解決したいという自分がやってみたかったことに関わることができ、社会人として自分の幅を広げることができたと思います。

 

―今後の課題・展望を教えてください。

現状EC サイトだけの取り扱いですので、できるだけ多くの写真を掲載したり、動画で詳しい機能を紹介したりしていますが、試着を望む声が多いので、期間限定のイベント等を検討しています。より多くの方に身近に感じてもらう機会を作っていきます。第2弾は色やサイズのバリエーションを増やしましたが、改めてお客様の声を洗い直していきたいです。実際、手袋など別のアイテムのニーズもあがっています。

 

―最後にお二人から一言ずつお願いします。

(Social WEnnovators 浅井様)

一人でも多くの人に、このプロジェクトのことを知ってもらいたいですね。より多くの一人の人の課題を解決するプロダクトをUNITED ARROWS さんと一緒に増やしていけたらいいなと思っています。多くの他の人の解決につながるということが、UNITED ARROWS さんと組んだ今回のファッション分野のプロジェクトで経験できたので、もっと違う領域にもいつか挑戦してみたいと思います。時間と体力は必要ですが(笑)

(UA 玉井様)

これからも熱量変わらず商品開発を続けていきたいと思います。

―ありがとうございました。

※2020年4月に新アイテム「スタイにもなるZIP Tシャツ」が加わりました。詳しくはオンラインストアにてご確認ください。

https://store.united-arrows.co.jp/shop/ua/data/catalog/041/7249-299-0149.html

 

【参考資料】

株式会社ユナイテットアローズ (https://store.united-arrows.co.jp/shop/ua/data/catalog/041/

Social WEnnovators (https://wennovators.com/)

この企業について

株式会社ユナイテッドアローズ

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