ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―NPO法人WE21ジャパン―

2020/10/07

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―NPO法人WE21ジャパン―

NPO法人WE21ジャパンは、1998年に主婦が中心となって活動を開始し、リサイクル、民際協力、政策提言など多岐にわたる活動を行いながら年々活動規模を拡大。最近では、開発から手がけたフィリピンのフェアトレード商品「ジンジャーティ」の販売も好調です。今回は、WE21ジャパン事務局長の贄川恭子さんにお話を伺いました。

―はじめに、WE21ジャパンはどのような団体なのか、教えてください。

WE21ジャパンは、環境、貧困、人権などの問題を地域から考えようとする団体です。海外で活動するNGOと地域市民をつなぎ、ともに平和をつくっていくことを目的としています。

具体的な活動としては、「WEショップ」というチャリティショップを運営し、その販売収益で民際協力、共育(ともいく:市民の学びの場の提供、印刷物の発行など)、政策提言などを行っています。このWEショップのスタイルは、英国のオックスファム(貧困と不正を根絶するための支援・活動を展開する団体)をモデルにしています。英国にはオックスファムショップというチャリティショップがどの町にもあり、市民から寄付された物品を再販売し、その収益で国際協力などを行っています。

 

―WEショップについて、もう少し詳しく教えてください。

WEショップは、「WE21ジャパン地域NPO」が運営しています。現在、神奈川県を中心に、36の「WE21ジャパン地域NPO」が活動しており、ショップは49あります。その全体のとりまとめを、WE21ジャパンが行っています。WEショップは先述の通り、英国のオックスファムをモデルとしていますが、オックスファムは本部が各ショップを統括する中央集権的な組織であるのに対し、WE21ジャパンではそれぞれのショップを地域ごとに独立したNPOが運営しているという違いがあります。ショップによって売り上げ規模は月30万~150万円と大きく変わり、運営方法もそれぞれ異なります。WE21ジャパンはショップ立ち上げ時のサポートは行いますが、経営は各ショップに任せています。物事を進める時には、トップダウン方式のほうが簡単ですが、手間がかかっても、独自性を尊重したいと思っているのです。英国のやり方をそのまま日本に持ち込むのではなく、地域性を重視して、市民が自発的に考えて動ける組織にしようということから、このような形になりました。

―WE21ジャパンで販売するソーシャルプロダクツについて教えていただけますか。

WEショップでは、地域住民から寄付された衣料・雑貨を販売するほかに、環境や国際協力に関連した商品を販売しています。現在は、フィリピンのフェアトレードのジンジャーティやコーヒー、リサイクル衣料の繊維から作った手袋などを販売しています。

10年間に渡るフィリピンのNGOや住民組織との交流から生まれたのがジンジャーティです。私たちがフィリピンに視察にいった際に、現地で健康づくりのために飲まれていたジンジャーティをお土産に買ったのですが、これが好評で、日本に輸入して販売することになりました。この輸入販売を通じて、現地の地域保健事業や人々の暮らしを支援することができます。

フィリピンと日本では製品に対する感覚が異なりますから、現地へ行ってパッケージングなどを指導して、日本の基準に合致するものを作ってもらいました。WE21ジャパンが輸入して、検品し、日本販売用にラベルを貼り、各ショップに卸したり、国際協力イベントで販売したりしています。現在は年間で3000個ほどの販売数になっています。イベントでは試飲を行いながら販売するとよく売れますね。2020年からは「森育ちのしょうがパウダー」に商品名を変え、生産者の方たちと一緒に作った、より環境に配慮したパッケージにリニューアルしますので、より多くの方にアピールしていきたいです。

コーヒーは、森林伐採がひどかったフィリピンにおいて、環境保全とともに、現地住民の収入にもつながるものを植えようということで現地のNGOが栽培するのを支援しました。コーヒーは家の周りに植わっていて毎日飲むものでしたが、販売のために植樹しています。山岳地帯で朝晩の冷え込みが激しい土地なので、コーヒー栽培に向いていて、輸出できるほどの量が収穫できるようになってきました。

手袋は、WEショップで売ることが出来なかった古着を回収して渡している故繊維業者が、繊維を編みなおし、手袋として生まれ変わらせました。古着は神奈川県内の美大と協力して、リサイクルアートの材料として使ってもらったり、リメイクして衣類やバッグなどにしたりしています。

―フェアトレード商品の販売について、教えてください。

フェアトレード品やリサイクル品はリユース販売品と比べると値段も高いので、当然売れにくいです。そこで、販売に際しては、フェアトレードの意味を勉強して、お客さんに「安くない」ことの意義を伝えられるように、いろいろな工夫をしています。掲示物などの工夫、レイアウトの工夫もそうですが、わかりやすく理解できるように、 フェアトレードの開発教材もつくりました。自信をもって語れないと、売れていかないと思います。

―多彩な活動を行い、年々規模を拡大されているようですが、それができている理由は何でしょうか。

WE21ジャパンは、一般の主婦が立ち上げた団体です。ビジネスのプロではありませんが、市民活動やボランティアに熱心な神奈川で、独自性を重視した活動を展開してきたため、参加した人がやりがいを感じながら自発的に事業に携われていることが大きな理由だと思います。結婚・出産を機に主婦として家庭に入ったものの、経験も能力もある女性はたくさんいるのです。そういった女性が、やりがいを見出しながら活動に参加し、学校や地域の活動を通じて口コミで「WEショップに参加しない?」と人の輪が広がっていきました。

店舗の運営は、有償スタッフと無償ボランティアの両方によって行われています。ボランティアの方はほとんどが家庭の主婦なので、週1~2回の方が多いですね。どのショップも、ボランティアが働きやすいようにシフトを組んで運営しています。

課題は活動を担う人たちの世代交代です。現在、WEショップを立ち上げてきた世代が中核となっていますが、若いスタッフが育っていかないと、世代交代がうまくいきません。若いスタッフの育成が今後の課題だと思っています。

目標は、WE21ジャパンのような社会貢献を行うリユース・リサイクルショップが全国に展開されることです。現在は神奈川県を中心に49のショップが展開していますが、こうした活動を全国に広めていきたいと思っています。

フェアトレード商品については、あくまでも現地の人々の活動応援、生活向上の応援という姿勢は崩さず、私たち日本の消費者の都合で現地の人々を振り回してしまわないようにしたいと思っています。

リサイクル商品は、使う人が増えて初めてリサイクルの輪が成り立つわけですから、もっと周知を広めていきたいですね。リサイクル品を使うことが「かっこいい」ことになるように市民の意識を変えていければいいですね。リメイク品も、暮らしの中で、ものを大事に使い切ることがあたりまえになるように、誰もが作れるように拡げていきたいと思っています。

 

(当記事は2014年9月に発行された当協会ニュースレターにて紹介したものを、2020年10月現在の情報に改めた記事となっております。)

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