ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―株式会社ゼンショーホールディングス―

2017/08/31

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―株式会社ゼンショーホールディングス―

株式会社ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショー)では、フェアトレードによって買い入れた安全で高品質なコーヒー・カカオ(チョコレート)・紅茶を、国内外のゼンショーグループの店舗で提供・販売することにより、途上国の生産者に正当な収入をもたらし、生活の向上と経済的自立を支えています。同社のフェアトレード部の池田俊幸さんにお話をうかがいました。

 

-まずゼンショーでフェアトレードを行うことになったきっかけからお話いただければと思います。

2006年に、「CMD室」(Office of Coffee Manufacturing & Merchandising Development:現フェアトレード部)というコーヒー専門の部署を立ち上げました。これはMMD「マス・マーチャンダイジング・システム」、「世界中の人々に安全でおいしい食を手軽な価格で提供する」という、ゼンショーの経営理念に基づいたものです。

開発途上国における生産者は、中間業者に頼らざるを得ない状況のため、彼らに過剰に利益を搾取されてしまい、その結果、十分な収入が得られず、生活が不安定になるということが起こりがちです。けれども、生産者がまとまって協同で生産者組合を作り、市場と直接つながって安定した取引量を確保し、フェアトレードによって組織を発展させていくことができれば、私たちとしても、お客様に対して安全で高品質なコーヒーをお手頃な価格で安定的に提供することが可能となるわけです。

-素晴らしい考えに基づいてフェアトレードに取り組まれているわけですね。

当社では2007年にグループ店舗である「すき家」にドリップバックコーヒーを入れようということで、東ティモールとフェアトレードを開始しました。人口およそ113万人、国土面積14,000平方キロメートルと、日本の四国より小さいこの国のコーヒーはあまり知られていないようですが、近年では有機栽培で育てられたコーヒーとして注目されています。

この国でフェアトレードを開始した理由は、現在の私の部署の上司が、当時、ビジネスで東ティモールに何度も足を運んで土壌や気候のすばらしさを知っていたからでした。その昔、東ティモールがポルトガルに植民地支配されていた時代の1815年にポルトガルの総督によってアラビカ種のコーヒー苗が持ち込まれ、それをきっかけにコーヒー作りが始まりました。およそ200年に及ぶコーヒーづくりの基盤もあったのです。このほかにも「ピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ)」という緊急支援を行うNGOが、東ティモールでコーヒーの売り先を探していたということもありました。

ゼンショーでは、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という理念を掲げていることから、NGOを通じて東ティモールの生産者のサポートを行うことで、彼らの生活水準の向上と経済的自立を支えていけたらと考えていました。そうして2009年に、3人という少数精鋭でフェアトレード部をスタートしました。

現在は国内に5人と、2009年のタンザニアでのフェアトレード開始に伴って現地で採用したスタッフ1人の計6人で活動しています。

-具体的にはどういった形で現地でのコーヒー生産者の支援に取り組まれているのでしょうか?

当社では現地の生産者の方が持続可能な形で子や孫に農地やコーヒーづくりを伝承していけるように、化学肥料や農薬に頼らず、完全無農薬で育てる「循環農法」を推進しています。そのために、現地に専門家を派遣して技術指導を行ってきました。

また、農薬や化学肥料などの化学物質を使用しない「有機JAS」の認定を、東ティモールはもとより、フェアトレード先として開拓したメキシコ、ペルー、エクアドルにおいても取得しました。それによって、環境や生産者に配慮した品質の高いコーヒーを調達することが可能となっています。

そのほか、生産者団体が得た「社会開発資金」などの有効活用にも協力し、地域で不足している水道施設や小学校などの教育施設の建設、さらには医療施設の充実などもはかっています。長期にわたる取引と支援が目標です。

-実際に現地の方とコーヒーの取り組みを通して苦労した点などはありましたか?

女性は働き手として必要不可欠ですが、途上国の多くで男尊女卑の風習が残っており、男性は同じ現場で作業する女性からの提案や意見にまったく耳を貸さないことがありました。収入の向上を目的にフェアトレードの活動をしているにもかかわらず、男性が女性に相談せずに自分勝手にお金を使ってしまうということも、たびたび見受けられました。

そこで私たちは、男女の生産者ともに意見を聞いて、何をしていくのがベストなのか、問題が発生したときにどうすれば解決できるのか、分け隔てなく双方の考えを汲み取っていきながら、辛抱強くコミュニケーションを取り続けてきました。その成果もあって、コーヒーづくりの取り組みを始めた当初の男尊女卑の風潮に変化が見られ、現地の男性が女性の意見も取り入れるなど、双方が本音でコミュニケーションを取れるようになるまでに改善されました。

 

-その他、現地で抱えている課題や問題点などはありますか?

生産者の方は高齢の方が多く、村に残る若い人が少ないという現状があります。若い人たちが農業に魅力を感じてもらえるように、私たちもどのようなことができるのか、考えていかなければなりません。

 

-お客様の商品に対するご反応やご意見はいかがでしょうか?

たいへんご好評をいただいております。すっきりとした味わいなので、食後に飲みやすいという意見をお客様から頂戴しています。またココスではドリンクバーで飲めるようにしており、「コーヒーがおいしいからココスに来るんです」とおっしゃるお客様もいらっしゃいます。

ココスで提供しているコーヒー豆はペルーのマチュピチュよりさらに山奥で、有機農法によって作られたものを使用していますので、自信をもってお勧めします。

またすき家で提供するコーヒーも、「価格は100円と安いのに、味は本格的で他の牛丼屋では絶対に味わえない」と評判で、朝の出勤前にコーヒーだけを買いに来たり、店内で食事した後にコーヒーをテイクアウトにしていただくお客様も多いです。

フェアトレードによって作られたコーヒーを、一人でも多くのお客様に飲んでいただければ、東ティモールを筆頭とした開発途上国の支援につながります。そのあたりについてご存じない方も多いので、フェアトレードの活動についてもっと広く認知していただくべく、ゼンショーグループの各店舗においてさらにPR活動を進めてまいりたいと思います。

 

-最後に会社として今後、力を入れて取り組んでいきたいことがございましたら教えてください。

現在、フェアトレードによって、コーヒー、紅茶、カカオを輸入をしていますが、今後もフェアトレードの取り組みには注力していきたいと考えております。また、より多くの人にお召し上がりいただけるよう販路を拡大し、さらにコーヒー・紅茶・カカオ以外の商品も新たに開発していきたいと考えております。

 

-ありがとうございました。

この企業について

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